《百人一首・上の句から覚える》 1~20
= 百人一首 (小倉百人一首) を覚える =

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「小倉百人一首」とは
百人一首ひゃくにんいっしゅ」とは、読んで字の如く百人の歌を一首ずつ集めたもので、「後撰百人一首」「源氏百人一首」など様々ありますが、最も有名なものが文暦2年・1235年に成立したとされる「小倉百人一首おぐらひゃくにんいっしゅ」です。
 現代において「百人一首」と言えば「小倉百人一首」と言っても過言ではなく、その原型は、鎌倉時代の歌人藤原定家が、嵯峨小倉山荘で奈良時代の天智天皇から鎌倉時代の順徳院まで570年間の百人の歌を選び、百枚の色紙に揮毫した『小倉山荘色紙和歌』『嵯峨山荘色紙和歌』などと呼ばれるものです。
「小倉百人一首」は、第一から第十までの勅撰和歌集の中から選ばれ、『古今集』からの歌が二十四首で最も多く、種別で最も多いのは恋歌で四十三首選ばれています。作者は男性が79人、女性が21人です。
 歌道の入門書として読み継がれ、また、習字の手本として使われたり江戸時代になると木版画による絵入りの「かるた」として庶民の間にも広まり現代に至っています。

勅撰和歌集ちょくせんわかしゅうは、天皇などの命により編纂された歌集のことで、藤原定家が百人一首を選んだのは次の十集です。
  ・ 『古今和歌集』………24首
  ・ 『後撰和歌集』……… 7首
  ・ 『拾遺和歌集』………11首
  ・ 『後拾遺和歌集』……14首
  ・ 『金葉和歌集』……… 5首
  ・ 『詞花和歌集』……… 5首
  ・ 『千載和歌集』………14首
  ・ 『新古今和歌集』……14首
  ・ 『新勅撰和歌集』…… 4首
  ・ 『続後撰和歌集』…… 2首
使い方と説明
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 番号のついた一行目は、短歌の基本形「五・七・五・七・七」の五句のうちの上の句の一句目、つまり、初句・第一句です。
 初句・第一句が同じものが六首あります。この六首については、第二句まで一行目に表記しました。
 二行目は、歴史的仮名遣いによる漢字仮名交じりの句です。定家筆の「色紙」は仮名書きでしたが、後世に様々な人が書写した際、それぞれの和歌の出典を思い出したりしながら漢字仮名交じり文字で書かれ、様々な表記の注釈書などがあまた伝わっています。
 三行目の緑の字は、歴史的仮名遣いによる表記です。
 三行目・四行目で、太字で赤く着色した部分は、「かるたの早取り」として覚えるための上の句の「決まり字」です。
 四行目の青い字の行は、現代仮名遣いによる表記です。
 五行目は、作者とその歌が収められている勅撰和歌集です。
 六行目は、各勅撰集に収められている原歌とされるもの、または、基になっている歌集です。この百人一首とは字句が違うものもあります。
 枕詞、掛詞が含まれる場合は七行目に記しました。枕詞は、係る語を矢印で示しています。
 枕詞、掛詞などにも解釈が様々あるようです。ここに記載したものが全てではありません。歌の表記、作者の読み方などと合わせて専門書などでご確認ください。
 それぞれに、江戸時代初期の浮世絵師・菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の画による「小倉百人一首」を掲載しました。これは、延宝8年・1680年の作品で、国立国会図書館が所蔵するものです。
1 秋の田の
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
あきたの かりおのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
天智天皇てんじてんのう = 中大兄皇子なかのおおえのおうじ 「後撰集」
秋の田の かりほのいほの 苫をあらみ わがころもでは 露にぬれつつ
[掛詞] かりほ = 仮庵・刈り穂
2 春過ぎて
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
はるぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
はるぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま
持統天皇じとうてんのう 「新古今集」
春すぎて 夏きたるらし 白袴の 衣ほしたり天の香具山 「万葉集」
3 あしびきの
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
びきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
びきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん
柿本人麻呂かきのもとのひとまろ 「拾遺集」
あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む 「万葉集」
[枕詞] あしびきの → 山
4 田子の浦に
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
のうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
のうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
山部赤人やまべのあかひと 「新古今集」
田子の浦ゆ うちいでてみれば 真白にぞ 不尽の高嶺に 雪は降りける 「万葉集」
5 奥山に
奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき
やまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき
やまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき
猿丸大夫さるまるだゆう 「古今集」
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋はかなしき 「万葉集・よみ人しらず」
6 かささぎの
かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
さぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
さぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
中納言家持ちゅうなごんやかもち = 大伴家持おおとものやかもち 「新古今集」
かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
7 天の原
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
あまはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
あまはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
安倍仲麿あべのなかまろ・安倍仲麻呂・阿部仲麻呂 「古今集」
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
8 わが庵は
わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
わがほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
わがおは みやこのたつみ しかぞすむ よをうじやまと ひとはいうなり
喜撰法師きせんほうし 「古今集」
吾が庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
[掛詞] うぢ = 憂し・宇治
9 花の色は
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
はないろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
はないろは うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに
小野小町おののこまち 「古今集」
花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせし間に
[掛詞] ふる = 降る・経る  ながめ = 長雨・眺め
10 これやこの
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関
やこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
やこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき
蝉丸せみまる 「後撰集」
これやこの 行くも帰るも 別れつつ 知るも知らぬも 逢坂の関
[掛詞] あふ = 逢ふ・逢(坂)
11 わたの原 八十島かけて
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまのつり舟 
わたのはら そしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
わたのはら そしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
参議篁さんぎたかむら = 小野篁おののたかむら 「古今集」
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣舟
12 天つ風
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
あまかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん
僧正遍昭そうじょうへんじょう(照)「古今集」
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
13 筑波嶺の
筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
ばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
ばねの みねよりおつる みなのがわ こいぞつもりて ふちとなりぬる
陽成院ようぜいいん 「後撰集」
筑波嶺の峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりける
14 陸奥の
陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに
のくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
のくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに
河原左大臣かわらのさだいじん = 源融みなもとのとおる 「古今集」
陸奥の 信夫もぢずり 誰ゆゑに 乱れむと思う我ならなくに
[枕詞] そめ= 染め・初め
15 君がため 春の野に出でて
君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ
きみがため るののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
きみがため るののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
光孝天皇こうこうてんのう 「古今集」
君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
16 立ち別れ
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
わかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
わかれ いなばのやまの みねにおうる まつとしきかば いまかえりこん
中納言行平ちゅうなごんゆきひら = 在原行平ありわらのゆきひら 「古今集」
たち別れ いなばの山の 峰に生ふる 松とし聞かば 今帰り来む
[掛詞] いなば = 往なば・稲羽(因幡) まつ = 松・待つ
17 ちはやぶる
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
やぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
やぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは
在原業平朝臣ありわらのなりひらあそん 「古今集」
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
[枕詞] ちはやぶる → 神
18 住の江の
住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
みのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
みのえの きしによるなみ よるさえや ゆめのかよいじ ひとめよくらん
藤原敏行朝臣ふじわらのとしゆきあそん 「古今集」
住江の 岸に寄る浪 夜さへや 夢のかよひ路 人目よくらむ
[掛詞] よる = 寄る・夜
19 難波潟
難波潟 短き蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
なにはた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや
なにわた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや
伊勢いせ 「新古今集」
難波潟 短き蘆の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
[掛詞] ふしのま = 節と節の間・短い時間  よ = 節・世の中・男女の仲
20 わびぬれば
わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
ぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
ぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう
元良親王もとよししんのう 「後撰集」
わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
[掛詞] みをつくし = 澪標・身を尽くし
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Last updated : 2022/11/22