作品に出てくるものの数え方(助数詞)
 
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本
作 家
作 品
夏目漱石
【余と万年筆】
万年筆の最上等になると一本で三百円もするのがあるとかいう話である。丸善へ取り寄せてあるのでも既に六十五円とかいう高価なものがあるとか聞いた。固(もと)より一般の需要は十円内外の低廉(ていれん)な種類に限られているのだろうが、夫(それ)にしても、一つ一銭のペンや一本三銭の水筆に比べると何百倍という高価に当るのだから、それが日に百本も売れる以上は、我々の購買力が此の便利ではあるが贅沢品(ぜいたくひん)と認めなければならないものを愛玩(あいかん)するに適当な位進んで来たのか、
夏目漱石
【彼岸過迄】
やむを得ず横になったまま巻煙草(まきたばこ)一本吸っていると、半分ほどに燃えて来た敷島(しきしま)の先が崩れて、白い枕が灰だらけになった。
夏目漱石
【永日小品】
巡査は台所へ廻った。そこで妻(さい)を捉(つら)まえて、紛失(ふんじつ)した物を手帳に書き付けている。繻珍(しゅちん)の丸帯が一本ですね、――丸帯と云うのは何ですか、丸帯と書いておけば解るですか、そう、それでは繻珍の丸帯一本と、それから……
芥川龍之介
【煙管】
加州一藩の経済にとっては、勿論、金無垢の煙管(きせる)一本の費用くらいは、何でもない。が、賀節(がせつ)朔望(さくぼう)二十八日の登城(とじょう)の度に、必ず、それを一本ずつ、坊主たちにとられるとなると、容易ならない支出である。
芥川龍之介
【枯野抄】
木節はやがてかう云つて、静に後にゐる治郎兵衛を顧みた。一椀の水と一本羽根楊子とは、既にこの老僕が、用意して置いた所である。彼は二品をおづおづ主人の枕元へ押し並べると、思ひ出したやうに又、口を早めて、専念に称名(しようみやう)を唱へ始めた。
芥川龍之介
【首が落ちた話】
北京(ペキン)にある日本公使館内の一室では、公使館附武官の木村陸軍少佐と、折から官命で内地から視察に来た農商務省技師の山川理学士とが、一つテエブルを囲みながら、一碗の珈琲(コオヒイ)と一本葉巻とに忙しさを忘れて、のどかな雑談に耽(ふけ)っていた。
森鷗外
【百物語】
百物語とは多勢の人が集まって、蝋燭(ろうそく)百本立てて置いて、一人が一つずつ化物(ばけもの)の話をして、一本ずつ蝋燭を消して行くのだそうだ。そうすると百本目の蝋燭が消された時、真の化物が出ると云うことである。
太宰治
【女生徒】
急に音楽、薔薇のワルツ。ああ、おかしい、おかしい。現実は、この古ぼけた奇態な、柄(え)のひょろ長い雨傘一本。自分が、みじめで可哀想。マッチ売りの娘さん。どれ、草でも、むしって行きましょう。
太宰治
【酒の追憶】
丸山君は微笑して、
「いや、それが、こいつなんです。」
と言って風呂敷から、トミイウイスキイの角瓶一本取り出して、玄関の式台の上に載せた。洒落(しゃれ)たひとだ、と私は感心した。その頃は、いや、いまでもそうだが、トミイウイスキイどころか、焼酎でさえめったに我々の力では入手出来なかったのである。
梶井基次郎
【城のある町にて】
奥の間で信子の仕度を手伝ってやっていた義母(はは)が「さあ、こんなはどうやな」と言って団扇(うちわ)二三本寄せて持って来た。
有島武郎
【或(あ)る女(後編)】
葉子は思わず毛孔(けあな)一本一本逆立(さかだ)つほどの寒気(さむけ)を感じた。かつて母という言葉もいわなかった貞世の口から思いもかけずこんな事を聞くと、その部屋のどこかにぼんやり立っている母が感ぜられるように思えた。
尾崎紅葉
【金色夜叉】
銃槍(じゆうそう)の忍返(しのびがへし)を打ちたる石塀(いしべい)を溢(あふ)れて一本(ひともと)の咲誇れるを、斜(ななめ)に軒ラムプの照せるがその門(かど)なり。
泉鏡花
【七宝の柱】
は中尊寺の門内にも咲いていた。麓(ふもと)から上(あが)ろうとする坂の下の取着(とッつき)の処(ところ)にも一本(ひともと)見事なのがあって、山中心得(さんちゅうこころえ)の条々(じょうじょう)を記した禁札(きんさつ)と一所(いっしょ)に、たしか「浅葱桜(あさぎざくら)」という札が建っていた。
岡本かの子
【桜】
桜花(さくらばな)軒場(のきば)に近し頬(ほ)にあつるかみそりの冷えのうすらさびしき

山川のどよみの音のすさまじきどよみの傍(そば)の一本(ひともと)

桜花(はな)さけど廚(くりや)女房いつしんに働きてあり釜(かま)ひかる廚

織田作之助
【猿飛佐助】
「人間にして人間にあらず。人間を超克した者だ。天も聴け、地も聴け! 人間は超克さるべき或る物である」
と、老人はにわかに教師口調になって、天を指したが、天井からは一本落ちて来なかったので、更に言葉をはげまして、然しこそこそと落着かぬ眼尻から垂れる眼やにを拭きながら、
織田作之助
【猿飛佐助】
三町四方に蚤の飛んだ音も聴きわけるという佐助が、怪しい楼上の声を聴きつけて、そう呟いた途端、一本手裏剣が佐助の眉間めがけて、飛んで来た。
織田作之助
【放浪】
木下もやがて四十で、弁護士になることは内心諦めているらしく、彼の売る一本二銭の焼鳥は、ねぎ八分で、もつが二分、酒、ポートワイン、泡盛、ウイスキーなどどこの屋台よりも薄かった。
嘉村礒多
【足相撲】
玄關の二疊には、小説で讀まされて舊知の感のある、近所の酒屋の爺さんの好意からだと言ふ、銘酒山盛りの菰冠(こもかぶ)りが一本据ゑてあつて、赤ちやんをねんねこに負ぶつた夫人が、栓をぬいた筒口から酒をぢかに受けた燗徳利を鐵瓶につけ、小蕪(こかぶ)の漬物、燒海苔など肴(さかな)に酒になつた。
夢野久作
【爆弾太平記】
今度は内地に帰って、水産講習所長の紹介状一本、大上段に振り冠(かぶ)りながら、沿海の各県庁、水産試験場、著名の漁場漁港を巡廻し、
岡本綺堂
【青蛙堂鬼談 青蛙神(せいあじん)】
ある時、その城をあずかっている将軍が饗宴をひらいて、列席の武官と文官一同に詩や絵や文章を自筆でかいた扇子一本ずつをくれた。
押川春浪
【本州横断 癇癪徒歩旅行】
男は越中褌(ふんどし)一本、女は腰巻一枚、大の字也(なり)になり、鼻から青提灯(あおぢょうちん)をぶら下げて、惰眠を貪(むさぼ)っている醜体(しゅうたい)は見られたものではない。
宮本百合子
【婦人の創造力】
今日古い雑誌を見ますと、当時の婦人作家を集めて『文芸倶楽部』が特輯号を出していますが、そのお礼には何を上げたかというと、簪(かんざし)一本とか、半襟一掛とか帯留一本とかいうお礼の仕方をしています。そんな風に婦人の文学的活動は生活を立てて行く社会的な問題でなく、趣味とか余技のように見られていました。一葉なんかも大変に面白いことは、一方に「たけくらべ」のような作品もありますけれども、日記を読むとなかなか気骨のある婦人でした。
宮本百合子
【日は輝けり】
自分の机に坐って、あて途もなくあるものに、手を触れて心をまぎらそうとしていた彼は、鉄の文鎮(ぶんちん)の下に、一本封書を発見した。ハッと思って、一度目はほとんど意味も分らずに読んだ。
宮本百合子
【ようか月の晩】
仕事というのは、繍(ぬい)とりです。大きな眼鏡を赤鼻の先に掛け、布の張った枠に向うと、お婆さんは、飽きるの疲れるのということを知らず、夜までチカチカと一本を光らせて、いろいろ綺麗な模様を繍い出して行くのでした。
魯迅
井上紅梅訳
【故郷】
午後、彼は入用の物を幾つか撰り出していた。長卓二台、椅子四脚、香炉と燭台一対ずつ、天秤(てんびん)一本。またここに溜っている藁灰も要るのだが、(わたしどもの村では飯を焚く時藁を燃料とするので、その灰は砂地の肥料に持って来いだ)わたしどもの出発前(ぜん)に船を寄越して積取ってゆく。
寺田寅彦
【地図をながめて】
今、かりに地形図の中の任意の一寸角をとって、その中に盛り込まれただけのあらゆる知識をわれらの「日本語」に翻訳しなければならないとなったらそれはたいへんである。等高線ただ一本の曲折だけでもそれを筆に尽くすことはほとんど不可能であろう。
濱田耕作
【埃及雜記】
世界七不思議の一であつた名高いフワロスの燈臺は、僅に港口に其の位置を留めてゐるばかり、圖書館の址は何處に尋ぬ可き由もない。たゞ稍々面白いのは、羅馬時代の「カタコムベ」であるが、元來低平なるデルタの端にある此の市は、たとへ埃及中で最も健康地であるにせよ、私共旅人には何等の感興を湧かしめない。たゞ嬉しかつたことは、私が此の地で寫眞の「フイルム一本を買つた處、店の女が親切にも「カメラ」に入れ換へて呉れたことであつたが、此の夜私はチヾニヤの驛頭、セイス先生の柔い手を握り、期し難い再會を契つて別離の涙を呑む外はなかつた。動き出す汽車の窓から、影の如く先生の後姿が次第に夕闇の裡に消えて行く。私の心も闇く消えて行く。
夢野久作
【怪夢】
はるかの木工場から咽(むせ)んで来る旋回円鋸機(せんかいえんきょき)の悲鳴は、首筋から耳の付け根を伝わって、頭髪一本一本毎(ごと)に沁(し)み込んで震える。あの音も数本の指と、腕と、人の若者の前額(ぜんがく)を斬り割いた。
平出修
【計画】
「貴方は蕪木も承知の上で手を切つたと仰有(おつしや)つたが、蕪木の心中はどうだつたんでせうか。私には分からなかつたのです。貴方は私と連名で蕪木へ発信した事があつたね。蕪木に比すれば私の狭い自由もまだ大きな範囲で、燕木は手紙一本書くすら容易に許されない身でした。
田中貢太郎
【庭の怪】
二本の矢を執って縁側の簾の陰へ往って、一本を口にくわえ、一本の矢を弓に仕かけながら庭の方を覗いた。
庭では二人の少年が未だ組んだり離れたりして一生懸命になっていた。
国枝史郎
【生死卍巴】
その中の一人は意外にも、醍醐(だいご)弦四郎その人であり、その他は恐らく丹生川平の、住民達であろう、筒袖を着て山袴を穿いて、腰に一本ずつ脇差しを差した、精悍らしい若者達で、その数総勢で十人であった。
大阪圭吉
【幽霊妻】
――見れば、いままで気づかなかったその鏡台の、燃えるような派手な友禅の鏡台掛けが、艶(つや)めかしくパッと捲(ま)くりあげられたままであり、下の抽斗(ひきだし)が半ば引き出されて、その前に黄楊櫛(つげぐし)一本投げ出されているではございませんか。思わず立ち上がった私は、鏡台の前へかけよると、屈むようにして、改めてあたりの様子を見廻わしたのでございますが、抽斗の前の畳の上に投げ出された黄楊櫛には、なんと旦那様のお手に握られていたのと全く同じ髪の毛三、四本、不吉な輪を作って梳(す)き残されておりました……。
太宰治
【HUMANLOST】
銅貨のふくしゅう。……の暗躍。ただ、ただ、レッド・テエプにすぎざる責任、規約の槍玉にあげられた鼻のまるいキリスト。「温度表を見て下さい。二十日以降、注射一本、求めていません。私にも、責任の一半を持たせて下さい。注射しなけれあいいんでしょう?」
小島烏水
【天竜川】
この辺の川は、むかしは大岩だらけで、いく船を打ち割つたものださうだが、今でも俵石などいふ巨大な岩塊が、水の上へ背を露はしてゐる、朝に一本を抜かれ、夕に一本を折られるやうに、岩石は切り開かれて、川路は作られても、洪水や風雨が、後から後から、大小の石を転ばして来ては、一水もやらじとやうに、邪魔をする。
三遊亭圓朝
鈴木行三校訂・編纂
【西洋人情話英国孝子ジョージスミス之伝】
此の三千円は命の綱で大事な金でがんすから、此方(こちら)にお預け申して、さア旦那様を疑ぐる訳じゃ有りませんが、どうか三千円確かに預かった、入用(にゅうよう)の時には渡すという預(あずか)り証文一本御面倒でも戴きたいもので」
寺田寅彦
【先生への通信】
それでもモンブランの氷河を見に行った日は天気がよくておもしろうございました。寒暖計一本下げて気温を測ったりして歩きました。つるはしのような杖(つえ)をさげて繩(なわ)を肩にかついだ案内者が、英語でガイドはいらぬかと言うから、お前は英語を話すかときくと、いいえと言いました。
牧野信一
【緑の軍港】
わたしは妙に胸がざわめいて眠れなくなつたので、莨をとつて、そつとライターを點けた時、不圖仁王のやうな腕だけがぬツと傍らに突き出てゐるのに、ハツと思ふと、その拳にはしつかりと一本銀笛が握られてゐた。そして鼾は毛布の奧底だつた。
作者不詳
国民文庫
(明治43年)
校訂: 古谷知新
【源平盛衰記】
思ふ思も風と成、願ふ願もこたへつゝ、竜神納受を垂給ひ、新宮の湊に卒都婆一本寄たりけるを、浦人是を見咎て、熊野別当に奉りたれ共、世を恐たりけるにや、披露はなし。安芸の厳島にも一本付たりけり。
 
   
 
 
 

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Last updated : 2019/05/16