作品に出てくるものの数え方(助数詞)
 
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掛
作 家
作 品
泉鏡花
【婦系図前篇】
二人は顔を見合せて、ようように笑(わらい)が出た。
すぐにお蔦が、新しい半襟一掛(ひとかけ)礼に遣って、その晩は市が栄えたが。
二三日経(た)って、ともかく、それとなく、お妙がお持たせの重箱を返しかたがた、土産ものを持って、主税が真砂町へ出向くと、あいにく、先生はお留守、令夫人(おくがた)は御墓参、お妙は学校のひけが遅かった。
宮本百合子
【婦人の創造力】
『新小説』だとか、春陽堂から出ている『文芸倶楽部』とか−−後には大変通俗的になったけれども、露伴だとか一流の作家たちも当時は『文芸倶楽部』なんかに書いたわけです。その頃婦人作家が擡頭して大塚楠緒子とかいろいろな人がいて、やはり芸術的な力では一応の作家だったけれども、当時の社会ではまだ文化が低かったから、それでもって食べて行くことはできませんでした。今日古い雑誌を見ますと、当時の婦人作家を集めて『文芸倶楽部』が特輯号を出していますが、そのお礼には何を上げたかというと、簪(かんざし)一本とか、半襟一掛とか帯留一本とかいうお礼の仕方をしています。そんな風に婦人の文学的活動は生活を立てて行く社会的な問題でなく、趣味とか余技のように見られていました。一葉なんかも大変に面白いことは、一方に「たけくらべ」のような作品もありますけれども、日記を読むとなかなか気骨のある婦人でした。
水野仙子
【神樂阪の半襟】
『もう買はない?』と、夫は歩き出しながら言つた。
さやさやとその袖裏が搖れた時、『そら!』と手から手へ渡されるのではないかと思つた。けれどもそれは冷い空氣を避ける爲に、鼻と口とを押へたのであつた。
お里は少しく失望した。それでもどうやら夫の袂の中にあの半襟が潜んでゐるやうな氣がして、並んで歩くにも絶えずその邊が氣になつた。
『なんだかいやに默り込んでしまつたね。』と、かう言つて夫に顏を覘かれた時、お里はたゞ薄わらひした。
何事も知らぬやうに行き過ぎようとする夫の袖のかげから、お里は恐る恐る先刻の半襟店の飾窓に目をやつた。その時は反對の側の方に近く歩いてゐたのだけれど、視覺の記臆はあきらかにその幾筋もの模樣を識別した。
その一掛のところだけ明けられてあるか、それとも別なのが飾られてあるかと、まざまざそれが見えるやうな氣がしてゐたのも仇となつて、黒地の麻の葉はもとのとほりにその濃い彩で道行く人の目を引いてゐた。
 
   
 
 
 

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Last updated : 2019/05/16