新しい憲法 明るい生活 = 振り仮名付き =
[ 1947年(昭和22年)5月3日の憲法施行に合わせて全国の家庭に配布された冊子 ]

「日本国民(にほんこくみん)がお互(たが)いに人格(じんかく)を尊重(そんちょう)すること。民主主義(みんしゅしゅぎ)を正(ただ)しく実行(じっこう)すること。平和(へいわ)を愛(あい)する精神(せいしん)をもつて世界(せかい)の諸国(しょこく)と交(まじわ)りをあつくすること」

「新憲法(しんけんぽう)が大(だい)たん率直(そっちょく)に「われわれはもう戦争(せんそう)をしない」と宣言(せんげん)したことは、人類(じんるい)の高(たか)い理想(りそう)をいいあらわしたものであつて、平和世界(へいわせかい)の建設(けんせつ)こそ日本(にほん)が再生(さいせい)する唯一(ゆいいつ)の途(みち)である。今後(こんご)われわれは平和(へいわ)の旗(はた)をかかげて、民主主義(みんしゅしゅぎ)のいしずえの上(うえ)に、文化(ぶんか)の香(かお)り高(たか)い祖国(そこく)を築(きず)きあげてゆかなければならない」

 このような書き出しで始まる『新しい憲法 明るい生活』は、1947年(昭和22年)5月3日の憲法施行に合わせて全国の家庭に配布された冊子で、二千万部が作製されたとされます。

「新憲法(しんけんぽう)が私(わたし)たちに与(あた)えてくれた最(もっと)も大(おお)きな贈(おく)りものは民主主義政治(みんしゅしゅぎせいじ)である。民主主義政治(みんしゅしゅぎせいじ)ということを一口(ひとくち)に説明(せつめい)すれば「国民(こくみん)による、国民(こくみん)のための、国民(こくみん)の政治(せいじ)」ということである」と「民主主義」を説きます。

  さらに、「 私(わたし)たち日本国民(にほんこくみん)はもう二度(にど)と再(ふたた)び戦争(せんそう)をしないと誓(ちか)つた」「これは新憲法(しんけんぽう)の最(もっと)も大(おお)きな特色(とくしょく)であつて、これほどはつきり平和主義(へいわしゅぎ)を明(あきら)かにした憲法(けんぽう)は世界(せかい)にもその例(れい)がない」「私(わたし)たちは戦争(せんそう)のない、ほんとうに平和(へいわ)な世界(せかい)をつくりたい。このために私(わたし)たちは陸海空軍(りくかいくうぐん)などの軍備(ぐんび)をふりすてて、全(まった)くはだか身(み)となつて平和(へいわ)を守(まも)ることを世界(せかい)に向(むか)つて約束(やくそく)したのである」と「平和」について記します。

 最後に、「私(わたし)たちは新憲法(しんけんぽう)の実施(じっし)を迎え(むかえ)、新日本(しんにほん)の誕生(たんじょう)を心(こころ)から祝(いわ)うとともに、この新憲法(しんけんぽう)をつらぬいている民主政治(みんしゅせいじ)と、国際平和(こくさいへいわ)の輝(かがや)かしい精神(せいしん)を守(まも)りぬくために、全力(ぜんりょく)をつくすことを誓(ちか)おうではないか」と高らかに謳い上げています。

 ここでは、この『新しい憲法 明るい生活』の全文を掲載し、1947年(昭和22年)の“平和憲法”の施行を、当時どのように解説していたのかをみてみます。

※このページの振り仮名は当サイト編集において作成しました。原文には振り仮名はありません。
※後段に憲法が掲載されていますが、このページでは憲法には振り仮名を付けていません。
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憲法普及会編(けんぽうふきゅうかいへん)

新(あたら)しい憲(けん)法(ぽう) 明(あか)るい生(せい)活(かつ)

= 大切(たいせつ)に保存(ほぞん)して多(おお)くの人人(ひとびと)で回読(かいどく)して下(くだ)さい =

   新(あたら)しい日本(にほん)のために ――発刊(はっかん)のことば

 古(ふる)い日本(にほん)は影(かげ)をひそめて、新(あたら)しい日本(にほん)が誕生(たんじょう)した。生(うま)れかわつた日本(にほん)には新(あたら)しい国(くに)の歩(あゆ)み方(かた)と明(あか)るい幸福(こうふく)な生活(せいかつ)の標準(ひょうじゅん)とがなくてはならない。これを定(さだ)めたものが新憲法(しんけんぽう)である。
 日本国民(にほんこくみん)がお互(たが)いに人格(じんかく)を尊重(そんちょう)すること。民主主義(みんしゅしゅぎ)を正(ただ)しく実行(じっこう)すること。平和(へいわ)を愛(あい)する精神(せいしん)をもつて世界(せかい)の諸国(しょこく)と交( まじわ )りをあつくすること。
 新憲法(しんけんぽう)にもられたこれらのことは、すべて新日本(しんにほん)の生(い)きる道(みち)であり、また人間(にんげん)として生(い)きがいのある生活(せいかつ)をいとなむための根本(こんぽん)精神(せいしん)でもある。まことに新憲法(しんけんぽう)は、日本人(にほんじん)の進(すす)むべき大道(だいどう)をさし示(しめ)したものであつて、われわれの日常(にちじょう)生活(せいかつ)の指針(ししん)であり、日本国民(にほんこくみん)の理想(りそう)と抱負(ほうふ)とをおりこんだ立派(りっぱ)な法典(ほうてん)である。
 わが国(くに)が生(うま)れかわつてよい国(くに)となるには、ぜひとも新憲法(しんけんぽう)がわれわれの血(ち)となり、肉(にく)となるように、その精神(せいしん)をいかしてゆかなければならない。実行(じっこう)がともなわない憲法(けんぽう)は死(し)んだ文章(ぶんしょう)にすぎないのである。
 新憲法(しんけんぽう)が大(だい)たん率直(そっちょく)に「われわれはもう戦争(せんそう)をしない」と宣言(せんげん)したことは、人類(じんるい)の高(たか)い理想(りそう)をいいあらわしたものであつて、平和世界(へいわせかい)の建設(けんせつ)こそ日本(にほん)が再生(さいせい)する唯一(ゆいいつ)の途( みち )である。今後(こんご)われわれは平和(へいわ)の旗(はた)をかかげて、民主主義(みんしゅしゅぎ)のいしずえの上(うえ)に、文化(ぶんか)の香(かお)り高(たか)い祖国(そこく)を築(きず)きあげてゆかなければならない。
 新憲法(しんけんぽう)の施行(しこう)に際(さい)し、本会(ほんかい)がこの冊子(さっし)を刊行(かんこう)したのもこの主旨(しゅし)からである。
昭和(しょうわ)二十二年(にじゅうにねん)五月(ごがつ)三日(みっか) 憲法普及会(けんぽうふきゅうかい)会長(かいちょう) 芦田(あしだ) 均(ひとし)

新憲法(しんけんぽう)の特色(とくしょく)

  私(わたし)たちの生活(せいかつ)はどうなる

挿絵1

◇ 生(うま)れかわる日本(にほん)

 昭和(しょうわ)二十二年(にじゅうにねん)(一九四七(せんきゅうひゃくよんじゅうしち)年(ねん))五月(ごがつ)三日(みっか)――それは私(わたし)たち日本国民(にほんこくみん)が永久(えいきゅう)に忘(わす)れてはならない新日本(しんにほん)の誕生(たんじょう)日(び)である。私(わたし)たちが久(ひさ)しい間( あいだ )待(ま)ち望(のぞ)んでいた新憲法(しんけんぽう)が、この日(ひ)を期(き)して実施(じっし)されるのである。
 新憲法(しんけんぽう)が私(わたし)たちに与(あた)えてくれた最(もっと)も大(おお)きな贈(おく)りものは民主主義(みんしゅしゅぎ)である。民主主義政治(みんしゅしゅぎせいじ)ということを一口(ひとくち)に説明(せつめい)すれば「国民(こくみん)による、国民(こくみん)のための、国民(こくみん)の政治(せいじ)」ということである。民主的(みんしゅてき)な憲法(けんぽう)のもとでは国民(こくみん)が政治(せいじ)をうごかす力(ちから)を持(も)ち、政府(せいふ)も、役人(やくにん)も、私(わたし)たちによつてかえることができる。多数(たすう)のものが望(のぞ)むこと、多数(たすう)のものがよいときめて法律(ほうりつ)で定(さだ)めたこと、これを実行(じっこう)してゆくのが民主主義(みんしゅしゅぎ)である。
 私(わたし)たちは民主主義(みんしゅしゅぎ)を口(くち)にする前(まえ)に、まずすべてのものごとをよく知(し)り、正(ただ)しい判断(はんだん)を持(も)つように心(こころ)がけなければならない。特(とく)にわが国(くに)では今(いま)まで政治(せいじ)は一部(いちぶ)の人人(ひとびと)が思(おも)うままに動(うご)かしていたため、一般国民(いっぱんこくみん)は政治(せいじ)について教(おし)えられることが少(すくな)く、自分(じぶん)の意見(いけん)をのべることも窮屈(きゅうくつ)であつた。また自分(じぶん)の考(かんが)えをまとめるだけの勉強(べんきょう)も足(た)りなかつた。だから私(わたし)たちは新憲法(しんけんぽう)の実施(じっし)をよい機会(きかい)として政治(せいじ)のことを熱心(ねっしん)に学(まな)ぶ必要(ひつよう)がある。なぜならばこれからは政治(せいじ)の責任(せきにん)はすべて私(わたし)たちみんながおうことになつたからである。
挿絵2  新憲法(しんけんぽう)はわが国(くに)に長(なが)い間( あいだ )続(つづ)いてきた古(ふる)い因襲(いんしゅう)を大幅(おおはば)に改(あらた)めることになつた。家族制度(かぞくせいど)も大(おお)きくかわつた。女(おんな)の地位(ちい)も男(おとこ)と同等(どうとう)となつた。憲法(けんぽう)に附属(ふぞく)する民法(みんぽう)その他(た)の法律(ほうりつ)によつてこまかい点(てん)は数(かぞ)えきれないほどかわつてくる。このように法律(ほうりつ)だけが新(あたら)しくなつても、かんじんの頭(あたま)の切(き)りかえができなくては何(なん)の役(やく)にも立(た)たない。
 新憲法(しんけんぽう)と共(とも)に新(あたら)しく生(うま)れかわる日本(にほん)――私(わたし)たちも今(いま)こそ生(うま)れかわつた気持(きもち)で、この新(あたら)しい時代(じだい)に生(い)きぬいてゆこう。

◇ 明(あか)るく平和(へいわ)な国(くに)へ

 私(わたし)たちの日本(にほん)を明(あか)るく平和(へいわ)な住(す)みよい国(くに)にすること――これが新憲法(しんけんぽう)の目的(もくてき)である。新憲法(しんけんぽう)の前文(ぜんぶん)にはこの目的(もくてき)が力強(ちからづよ)くのべてある。
 旧憲法(きゅうけんぽう)では国(くに)の政治(せいじ)の最高(さいこう)の権限(けんげん)は天皇(てんのう)がお持(も)ちになつていた。そのため一部(いちぶ)の軍人(ぐんじん)や重臣(じゅうしん)などが天皇(てんのう)の名(な)をかりて、わがまま勝手(かって)にふるまい、悪(わる)い政治(せいじ)を行(おこな)うすきが多(おお)かつた。
 新憲法(しんけんぽう)では国(くに)の政治(せいじ)を行(おこな)う大(おお)もとの力(ちから)は国民全体(こくみんぜんたい)にあることが明(あきら)かにされた。従( したが)つて国(くに)の政治(せいじ)は 何(なに)よりもまず国民全体(こくみんぜんたい)が幸福(こうふく)な生活(せいかつ)ができるように行(おこな)われなければならない。決(けっ)して特別(とくべつ)な地位(ちい)にある人(ひと)や、一部(いちぶ)の少数(しょうすう)の人人(ひとびと)のために行(おこな)われるのではないことが、はつきりと示(しめ)されたのである。

◇ 私(わたし)たちの天皇(てんのう)

 天皇(てんのう)は神様(かみさま)の子孫(しそん)であるからというような神話(しんわ)をもととして、天皇(てんのう)の地位(ちい)や権限(けんげん)をこの上(うえ)なく重(おも)んじていたのが今日(こんにち)までのゆき方(かた)であつた。
 新憲法(しんけんぽう)では天皇(てんのう)は日本(にほん)の国(くに)の象徴(しょうちょう)であり、国民(こくみん)結(むす)び合(あ)いの象徴(しょうちょう)であるということが示(しめ)されてある(第一条(だいいちじょう))。これは私(わたし)たち国民全体(こくみんぜんたい)の天皇(てんのう)にたいする共通(きょうつう)の気持(きもち)をそのままあらわしたものである。
 象徴(しょうちょう)というのは一(ひと)つの「めじるし」であつて、これによつて国(くに)そのもの、または国民(こくみん)結(むす)び合(あ)いの実際(じっさい)の姿(すがた)がありありとわかることをいうのである。富士山(ふじさん)をみれば美(うつく)しい日本(にほん)の国(くに)が、また桜(さくら)をみればなごやかな日本(にほん)の春(はる)がわかるというのが、そのおよその意味(いみ)である。
 新憲法(しんけんぽう)では天皇(てんのう)は従来(じゅうらい)とは違(ちが)つて国(くに)のいろいろの政治(せいじ)に当(あた)られないこととなり、政治(せいじ)の責任(せきにん)はすべて内閣(ないかく)、国会(こっかい)、最高裁判所(さいこうさいばんしょ)がおうことになつた。政治(せいじ)以外(いがい)の国家的(こっかてき)な行事(ぎょうじ)についても、天皇(てんのう)の当(あた)られる国事(こくじ)は非常(ひじょう)にすくなくなつた。(第三条(だいさんじょう)―第七条(だいしちじょう))
 このように天皇(てんのう)についての憲法(けんぽう)の定(さだ)めがかわつたので、わが国(くに)の国柄(くにがら)まですつかりかわつてしまつたように思(おも)う人(ひと)もある。たしかに政治(せいじ)をうごかす力(ちから)は私(わたし)たち国民(こくみん)のものであるということがはつきりと示(しめ)されたし、形(かたち)の上(うえ)では、ずい分(ぶん)かわつた。しかし私(わたし)たちの天皇(てんのう)にたいする尊敬(そんけい)と信頼(しんらい)の気持(きもち)による結(むす)びつき、天皇(てんのう)を中心(ちゅうしん)として私(わたし)たち国民(こくみん)が一(ひと)つに結(むす)び合(あい)つているという昔(むかし)からの国柄(くにがら)は少(すこ)しもかわらないのであるから国体(こくたい)はかわらないといえるのである。

◇ もう戦争(せんそう)はしない

 私(わたし)たち日本国民(にほんこくみん)はもう二度(にど)と再(ふたた)び戦争(せんそう)をしないと誓(ちかい)つた。(第九条(だいきゅうじょう))
 これは新憲法(しんけんぽう)の最(もっと)も大(おお)きな特色(とくしょく)であつて、これほどはつきり平和主義(へいわしゅぎ)を明(あきら)かにした憲法(けんぽう)は世界(せかい)にもその例(れい)がない。
挿絵3  私(わたし)たちは戦争(せんそう)のない、ほんとうに平和(へいわ)な世界(せかい)をつくりたい。このために私(わたし)たちは陸海空軍(りくかいくうぐん)などの軍備(ぐんび)をふりすてて、全(まった)くはだか身(み)となつて平和(へいわ)を守(まも)ることを世界(せかい)に向(むか)つて約束(やくそく)したのである。わが国(くに)の歴史(れきし)をふりかえつてみると、いままでの日本(にほん)は武力(ぶりょく)によつて国家(こっか)の運命(うんめい)をのばそうという誤(あやま)つた道(みち)にふみ迷(まよ)つてゐた。殊(こと)に近年(きんねん)は政治(せいじ)の実権(じっけん)を握(にぎ)つていた者(もの)たちが、この目的(もくてき)を達(たっ)するために国民(こくみん)生活(せいかつ)を犠牲(ぎせい)にして軍備(ぐんび)を大(おお)きくし、ついに太平洋戦争(たいへいようせんそう)のような無謀(むぼう)な戦(たたか)いをいどんだ。その結果(けっか)は世界(せかい)の平和(へいわ)と文化(ぶんか)を破壊(はかい)するのみであつた。しかし太平洋戦争(たいへいようせんそう)の敗戦(はいせん)は私(わたし)たちを正(ただ)しい道(みち)へ案内(あんない)してくれる機会(きかい)となつたのである。
 新憲法(しんけんぽう)ですべての軍備(ぐんび)を自(みずか)らふりすてた日本(にほん)は今後(こんご)「もう戦争(せんそう)をしない」と誓(ちか)うばかりではたりない。進(すす)んで芸術(げいじゅつ)や科学(かがく)や平和産業(へいわさんぎょう)などによつて、文化国家(ぶんかこっか)として世界(せかい)の一等国(いっとうこく)になるように努(つと)めなければならない。それが私(わたし)たち国民(こくみん)の持(も)つ大(おお)きな義務(ぎむ)であり、心(こころ)からの希望(きぼう)である。
 世界(せかい)のすべての国民(こくみん)は平和(へいわ)を愛(あい)し、二度(にど)と戦争(せんそう)の起(おこ)らぬことを望(のぞ)んでいる。私(わたし)たちは世界(せかい)にさきがけて「戦争(せんそう)をしない」という大(おお)きな理想(りそう)をかかげ、これを忠実(ちゅうじつ)に実行(じっこう)するとともに「戦争(せんそう)のない世界(せかい)」をつくり上(あ)げるために、あらゆる努力(どりょく)を捧(ささ)げよう。これこそ新日本(しんにほん)の理想(りそう)であり、私(わたし)たちの誓(ちか)いでなければならない。

◇ 人(ひと)はみんな平等(びょうどう)だ

 人(ひと)はだれでもみんな生(うま)れながらに「人(ひと)としての尊(とうと)さ」をもつている。この尊(とうと)さをおかされないことが人(ひと)として最(もっと)も大切(たいせつ)な権利(けんり)であろう。新憲法(しんけんぽう)は何(なに)よりさきに、まずこの権利(けんり)を与(あた)えてくれる。(第十一条(だいじゅういちじょう))
 そして私(わたし)たちの生命(せいめい)や自由(じゆう)を守(まも)り、幸福(こうふく)な生活(せいかつ)ができるように、政治(せいじ)の上(うえ)でもいろいろと考(かんが)えてくれるように約束(やくそく)されている。新憲法(しんけんぽう)はこの考(かんが)えをもととして十分(じゅうぶん)な自由(じゆう)と権利(けんり)とを与(あた)えてくれたのである。(第十三条(だいじゅうさんじょう))
 軍閥(ぐんばつ)が政治(せいじ)を行(おこな)つた時代(じだい)には「国家(こっか)のために」とか「国民全体(こくみんぜんたい)のために」とかいう名目(めいもく)によつて、私(わたし)たちは、一部(いちぶ)の政治(せいじ)権力(けんりょく)を握(にぎ)る人人(ひとびと)のために、働(はたら)かされたり、権利(けんり)をふみにじられたこともしばしばあつた。これからは私(わたし)たちは自分(じぶん)の権利(けんり)を守(まも)ることができるというばかりでなく、国(くに)の政治(せいじ)は国民(こくみん)みんなの自由(じゆう)と幸福(こうふく)を何(なに)よりも大切(たいせつ)に考(かんが)えて行(おこな)われることになつた。
 またすべての国民(こくみん)は法律上(ほうりつじょう)は全(まった)く平等(びょうどう)であつて、あの人(ひと)は家柄(いえがら)がいいから私(わたし)たちよりえらいとか、女(おんな)は男(おとこ)より卑(いや)しいものだとか、そんな差別(さべつ)は一切(いっさい)ゆるされないこととなつた。華族制度(かぞくせいど)も廃止(はいし)されて国民(こくみん)はみな平等(びょうどう)の時代(じだい)となつたのである。(第十四条(だいじゅうよんじょう))

◇ 義務(ぎむ)と責任(せきにん)が大切(たいせつ)

 私(わたし)たちは新憲法(しんけんぽう)によつて、ずいぶん多(おお)くの自由(じゆう)や権利(けんり)を与(あた)えられたが、一生懸命(いっしょうけんめい)努力(どりょく)して、これを大切(たいせつ)に守(もり)つてゆく義務(ぎむ)がある。自由(じゆう)といつても他人(たにん)の迷惑(めいわく)も考(かんが)えずに勝手(かって)気(き)ままにふるまうことではない。権利(けんり)だからといつて無暗(むやみ)やたらにこれをふり廻(まわ)してはならない。私(わたし)たちは自分(じぶん)の自由(じゆう)や権利(けんり)を、いつでもできるだけ多(おお)くの人人(ひとびと)のしあわせに役立(やくだ)つように使(つか)うことが大切(たいせつ)である。(第十二条(だいじゅうにじょう))
 もしも各人(かくじん)がこの心(こころ)がけを持(も)たないで、民主主義(みんしゅしゅぎ)をはき違(ちが)え自分勝手(じぶんかって)なことばかりしていたなら世(よ)の中(なか)は今(いま)までよりも一(いち)そう住(す)みにくいものになつてしまうだろう。私(わたし)たちは権利(けんり)や自由(じゆう)が常(つね)に義務(ぎむ)と責任(せきにん)とを伴(ともな)うことを忘(わす)れてはならない。

◇ 自由(じゆう)のよろこび

「自由(じゆう)」とはいつたい何(なん)であろうか。一口(ひとくち)にいえば、自分(じぶん)の良心(りょうしん)に従(したが)つて生(い)きることである。長(なが)い間(あいだ)私(わたし)たちには、その自由(じゆう)さえも制限(せいげん)されていた。私(わたし)たちは何(なん)とかしてもつと自由(じゆう)がほしいと願(ねがい)つていた。いまその願(ねが)いが果(はた)されたのである。
挿絵4  私(わたし)たちはどんな考(かんが)えを持(も)つてもよい(第十九条(だいじゅうきゅうじょう))。神道(しんとう)でも、キリスト教(きょう)でも、仏教(ぶっきょう)でも、その他(た)どんな宗教(しゅうきょう)を信(しん)じてもよい。政府(せいふ)が私(わたし)たちにたいして特別(とくべつ)の宗教教育(しゅうきょうきょういく)を行(おこな)い、この宗教(しゅうきょう)を信(しん)じなければいけないなどといいつけることは許(ゆる)されなくなつた。(第二十条(だいにじゅうじょう))
 私(わたし)たちは、どんな会合(かいごう)をやつても、どんな団体(だんたい)をつくつても自由(じゆう)である。演説(えんぜつ)をしたり、新聞(しんぶん)や雑誌(ざっし)を出(だ)したりすることも自由(じゆう)になつた。どんな職業(しょくぎょう)をえらんでもいいし、学問(がくもん)の自由(じゆう)もまた認(みと)められた。
 これらはいづれも新憲法(しんけんぽう)が私(わたし)たちに与(あた)えてくれた贈(おく)りものである。(第二十一条(だいにじゅういちじょう)―第二十三条(だいにじゅうさんじょう))

◇ 女(おんな)も男(おとこ)と同権(どうけん)

 わが国(くに)では、とかく女(おんな)は男(おとこ)より一段(いちだん)と低(ひく)いものとして扱(あつか)われがちであつた。人(ひと)としての尊(とうと)さは、女(おんな)も男(おとこ)と何(なん)のかわりもない。
挿絵5  これまで結婚(けっこん)の場合(ばあい)など、自分(じぶん)がいやだと思(おも)つても親(おや)の意見(いけん)に従(したが)わなければならぬことがあつた。しかし新憲法(しんけんぽう)では、結婚(けっこん)は男女(だんじょ)双方(そうほう)の気持(きもち)があつた場合(ばあい)だけに行(おこな)われるので、自分(じぶん)の心(こころ)に合(あ)わない結婚(けっこん)をさせられることのないように定(さだ)めてある。
 また夫婦(ふうふ)は同等(どうとう)の権利(けんり)を持(も)ち、財産(ざいさん)のことや相続(そうぞく)のことについても、今(いま)までのように男(おとこ)だけを重(おも)く扱(あつか)い女(おんな)を軽(かろ)んずるということのないようになつた(第二十四条(だいにじゅうよんじょう))。戸主(こしゅ)や父親(ちちおや)だけが特別(とくべつ)に一家(いっか)の中心(ちゅうしん)となつていたわが国(くに)のむかしからの「家(いえ)」の制度(せいど)もかわつて、お互(たが)いの人格(じんかく)を尊(とうと)び男女(だんじょ)の平等(びょうどう)を主眼(しゅがん)として家庭(かてい)を営(いとな)むように改(あらた)められた。
 このように男(おとこ)と女(おんな)は全(まった)く平等(びょうどう)になり、いままでのような家族制度(かぞくせいど)にしばられることはなくなつた。そのかわりこれからの男女(だんじょ)は結婚(けっこん)や夫婦(ふうふ)生活(せいかつ)に対(たい)して全(まった)く自分(じぶん)で責任(せきにん)をおう必要(ひつよう)がある。
 とくに日本(にほん)の女(おんな)は、いままで親(おや)や親族(しんぞく)のいうままになることに慣(な)れていたから、この大切(たいせつ)な判断(はんだん)をする力(ちから)にかけたところがある。新憲法(しんけんぽう)で高(たか)められた女(おんな)の地位(ちい)を生(い)かすためには、日本(にほん)の女(おんな)はさらに一層(いっそう)その見識(けんしき)を深(ふか)めるように努力(どりょく)しなければならない。

◇ 健康(けんこう)で明(あか)るい生活(せいかつ)

 世間(せけん)を見(み)わたすと不幸(ふこう)な人(ひと)は沢山(たくさん)ある。乞食(こじき)、浮浪者(ふろうしゃ)、ゆき倒(たお)れの病人(びょうにん)など、こういう気(き)の毒(どく)な人人(ひとびと)が戦争後(せんそうご)はいよいよ多(おお)くなつてきた。
 新憲法(しんけんぽう)ではすべての国民(こくみん)は健康(けんこう)で文化的(ぶんかてき)な最低限度(さいていげんど)の生活(せいかつ)を営(いとな)むことを認(みと)めており、国(くに)は気(き)の毒(どく)な人人(ひとびと)を助(たす)け、国民(こくみん)一人(ひとり)残(のこ)らず人間(にんげん)らしい生活(せいかつ)のできるように努(つと)めなければならないと定(さだ)めてある。(第二十五条(だいにじゅうごじょう))
 また国民(こくみん)はすべて働(はたら)く権利(けんり)と義務(ぎむ)があり、働(はたら)きたい人(ひと)に職(しょく)を与(あた)えることも国(くに)の仕事(しごと)の一(ひと)つとなつた。また児童(じどう)に無理(むり)な働(はたら)きをさせてはならない。(第二十七条(だいにじゅうしちじょう))
 働(はたら)く人々(ひとびと)が団結(だんけつ)して組合(くみあい)をつくり、会社(かいしゃ)や工場(こうじょう)の雇主(やといぬし)に対(たい)して働(はたら)く時間(じかん)のことや賃金(ちんぎん)のことなどをかけ合(あ)うこともはじめて認(みと)められた権利(けんり)である。(第二十八条(だいにじゅうはちじょう))

◇ 役人(やくにん)は公僕(こうぼく)である

 憲法(けんぽう)に定(さだ)めがあつたにもかかわらず、実際(じっさい)には最近(さいきん)まで警察(けいさつ)や検事局(けんじきょく)が国民(こくみん)を手続(てつづき)なしに捕(とら)えて幾日(いくにち)も留置場(りゅうちじょう)へ入(い)れておいたり、むごい方法(ほうほう)で取調(とりしら)べを行(おこな)い、むりやりに自白(じはく)させたりすることも少(すくな)くなかつた。
 新憲法(しんけんぽう)ではすべてこうした不法(ふほう)なひどいことを固(かた)く禁(きん)じた。また罪(つみ)を犯(おか)した者(もの)も必(かなら)ず速(すみや)かに公平(こうへい)な公開(こうかい)の裁判(さいばん)を受(う)けられるようになつた。もし間違(まちが)つて罪人(ざいにん)の扱(あつか)いを受(う)けた場合(ばあい)は国(くに)に対(たい)しての損害賠償(そんがいばいしょう)も求(もと)めることが出来(でき)るようになつた。(第三十一条(だいさんじゅういちじょう)―第四十条(だいよんじゅうじょう))
 これからは悪(わる)いことをしない限(かぎ)り、いたずらに警察(けいさつ)や検事局(けんじきょく)をこわがる必要(ひつよう)はなくなつた。そればかりかこれからの役人(やくにん)は国民(こくみん)の生活(せいかつ)を守(もり)つてくれる私(わたし)たちの「公僕(こうぼく)」となつた。

◇ 国会(こっかい)は私(わたし)たちの代表(だいひょう)

 わが国(くに)の政治(せいじ)のしくみは国会(こっかい)と内閣(ないかく)と裁判所(さいばんしょ)の三(みっ)つに分(わ)けられている。国会(こっかい)は国(くに)の予算(よさん)をきめたり、法律(ほうりつ)をつくつたり、内閣(ないかく)はこの法律(ほうりつ)によつて政治(せいじ)を行(おこな)い、裁判所(さいばんしょ)はこの法律(ほうりつ)を正(ただ)しく解釈(かいしゃく)してそれを実行(じっこう)するのである。
 従(したが)つて国(くに)の最高(さいこう)の権力(けんりょく)を握(にぎ)つているものは国会(こっかい)であつて、これがただ一(ひと)つの立法(りっぽう)機関(きかん)である(第四十一条(だいよんじゅういちじょう))。その国会議員(こっかいぎいん)をえらぶのは、私(わたし)たち国民(こくみん)であるから、私(わたし)たちは、とりもなおさず国(くに)の政治(せいじ)の一番(いちばん)の大(おお)もとである。
挿絵6  国会(こっかい)は衆議院(しゅうぎいん)と参議院(さんぎいん)の二(ふた)つから成(な)りたつている。衆議院(しゅうぎいん)の組織(そしき)はこれまでと大差(たいさ)ないが、参議院(さんぎいん)はこれまでの貴族(きぞく)院(いん)が、皇族(こうぞく)、華族(かぞく)および一部(いちぶ)の特権(とっけん)階級(かいきゅう)の人人(ひとびと)からできていたのとちがつて、衆議院(しゅうぎいん)と同(おな)じように、やはり私(わたし)たちが選挙(せんきょ)によつて選(えら)んだ議員(ぎいん)で組織(そしき)することになつた。(第四十二条(だいよんじゅうにじょう)―第六十四条(だいろくじゅうよんじょう))
 国(くに)の政治(せいじ)に必要(ひつよう)な費用(ひよう)をどう使(つか)うかということも国会(こっかい)できめる。
 また新(あたら)しい税金(ぜいきん)をとることや税金(ぜいきん)の種類(しゅるい)をかえることも国会(こっかい)が法律(ほうりつ)としてきめなければやれない。(第八十三条(だいはちじゅうさんじょう)―第八十六条(だいはちじゅうろくじょう))
 このように国会(こっかい)議員(ぎいん)の任務(にんむ)は、この上(うえ)もなく重(おも)いものであるから私(わたし)たちはほんとうに信頼(しんらい)のできる立派(りっぱ)な人物(じんぶつ)をえらばなければならない。そして国(くに)の政治(せいじ)をになうものは結局(けっきょく)は国民(こくみん)自身(じしん)であることを私(わたし)たちは深(ふか)く考(かんが)えなければならないのである。

◇ 総理大臣(そうりだいじん)も私(わたし)たちが選(えら)ぶ

 国(くに)の政治(せいじ)の責任(せきにん)をになうものは内閣(ないかく)である。その内閣(ないかく)の長(ちょう)は総理大臣(そうりだいじん)である。総理大臣(そうりだいじん)は国会(こっかい)議員(ぎいん)の中(なか)から国会(こっかい)が指名(しめい)してきめるのである。つまり総理大臣(そうりだいじん)も私(わたし)たちが選(えら)ぶことになるわけだ。(第六十七条(だいろくじゅうしちじょう))
 その他(た)の国務大臣(こくむだいじん)は総理大臣(そうりだいじん)が任命(にんめい)し、その半数(はんすう)以上(いじょう)は国会(こっかい)議員(ぎいん)でなければならない。(第六十八条(だいろくじゅうはちじょう))
 このようにしてできた内閣(ないかく)は国会(こっかい)に対(たい)して責任(せきにん)をおうのであるが、一切(いっさい)の行政(ぎょうせい)は内閣(ないかく)によつて行(おこな)われるものである。

◇ 裁判所(さいばんしょ)は憲法(けんぽう)の番人(ばんにん)

 新憲法(しんけんぽう)では司法権(しほうけん)は裁判所(さいばんしょ)で行(おこな)うものと定(さだ)めた。最高裁判所(さいこうさいばんしょ)はこれまでと違(ちが)つて憲法(けんぽう)にそむくような法律(ほうりつ)は、これを無効(むこう)とすることができる。
 このように裁判所(さいばんしょ)の地位(ちい)は新憲法(しんけんぽう)によつて著(いちじる)しく高(たか)く重要(じゅうよう)なものとなつたが、それと同時(どうじ)に国民(こくみん)と国会(こっかい)との力(ちから)でこれを監視(かんし)することができるようになつた。例(たと)えば最高裁判所(さいこうさいばんしょ)の裁判官(さいばんかん)は内閣(ないかく)が任命(にんめい)するものであるけれども、これには私(わたし)たち国民(こくみん)がよろしいと認(みと)めることが必要(ひつよう)である。またもしも裁判官(さいばんかん)が不適任(ふてきにん)であれば、国会(こっかい)によつてその裁判官(さいばんかん)をやめさせることもできる。(第七十九条(だいしちじゅうきゅうじょう))

◇ 知事(ちじ)も私(わたし)たちが選挙(せんきょ)

 民主主義(みんしゅしゅぎ)の政治(せいじ)はただ中央(ちゅうおう)の政治(せいじ)ばかりでなく、私(わたし)たちの生活(せいかつ)にとつて最(もっと)も身近( みぢ)かな都道府県(とどうふけん)や市町村(しちょうそん)の行政(ぎょうせい)から行(おこな)われなければならない。
 これまでの憲法(けんぽう)では地方行政(ちほうぎょうせい)のことについては何(なん)の定(さだ)めもなかつた。そして政府(せいふ)が都道府県(とどうふけん)の知事(ちじ)を任命(にんめい)し、政府(せいふ)のきめた中央(ちゅうおう)の方針(ほうしん)を地方(ちほう)に押(お)しつけ、地方(ちほう)の実際(じっさい)の状態(じょうたい)に合(あ)つた政治(せいじ)が行(おこな)われることは少(すくな)かつた。
 そこで新憲法(しんけんぽう)では都道府県(とどうふけん)や市町村(しちょうそん)の政治(せいじ)は、その土地(とち)に住(す)む人人(ひとびと)が自分(じぶん)たちの責任(せきにん)で自分(じぶん)たちの選(えら)んだ代表(だいひょう)者(しゃ)により行(おこな)うことにきめられた。
 つまり東京都(とうきょうと)や北海道(ほっかいどう)の長官(ちょうかん)、各(かく)府県(ふけん)の知事(ちじ)は、これからは私(わたし)たちが選挙(せんきょ)してきめることとなり、市長(しちょう)村長(そんちょう)もまた私(わたし)たちが直接(ちょくせつ)に選挙(せんきょ)するのである。(第九十二条(だいきゅうじゅうにじょう)、第九十三条(だいきゅうじゅうさんじょう))
 こうして地方(ちほう)の政治(せいじ)も完全(かんぜん)に私(わたし)たちの手(て)で行(おこな)われることとなつた。この地方自治(ちほうじち)こそ民主政治(みんしゅせいじ)のもとである。

◇ 私(わたし)たちのおさめる日本(にほん)

 このように新憲法(しんけんぽう)は新(あたら)しい日本(にほん)の骨組(ほねぐみ)を定(さだ)め、また私(わたし)たちや私(わたし)たちの子孫(しそん)に対(たい)して大切(たいせつ)な権利(けんり)を約束(やくそく)してくれた。この新憲法(しんけんぽう)はわが国(くに)の最高(さいこう)の定(さだ)めであつて、他(た)の法律(ほうりつ)や命令(めいれい)などもすべてこの定(さだ)めにもとずくものである。
 もとより前(まえ)にのべたように国会(こっかい)や内閣(ないかく)や裁判所(さいばんしょ)などがあつて、それぞれの仕事(しごと)を分担(ぶんたん)しているけれども、わが国(くに)の政治(せいじ)の一番(いちばん)大(おお)もとの力(ちから)は私(わたし)たち国民(こくみん)の手(て)にあるのである。
 日本(にほん)をよい国(くに)にし、私(わたし)たちの生活(せいかつ)を明(あか)るくするためには、何(なに)よりも私(わたし)たち国民(こくみん)の一人一人(ひとりひとり)が、この憲法(けんぽう)を正(まさ)しく守(まも)つてゆく心(こころ)がけが大切(たいせつ)である。
 私(わたし)たちは新憲法(しんけんぽう)の実施(じっし)を迎(むか)え、新日本(しんにほん)の誕生(たんじょう)を心(こころ)から祝(いわ)うとともに、この新憲法(しんけんぽう)をつらぬいている民主政治(みんしゅせいじ)と、国際平和(こくさいへいわ)の輝(かがや)かしい精神(せいしん)を守(まも)りぬくために、全力(ぜんりょく)をつくすことを誓(ちか)おうではないか。(完(かん))

日本国憲法

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

第一章 天皇

  • 第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
  • 第二条 皇位は、世襲のものであつて、国家の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
  • 第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負ふ。
  • 第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
  • 第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
  • 第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
  • 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
  • 第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
  • 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  • 二 国会を召集すること。
  • 三 衆議院を解散すること。
  • 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
  • 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
  • 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
  • 七 栄典を授与すること。
  • 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
  • 九 外国の大使及び公使を接受すること。
  • 十 儀式を行ふこと。
  • 第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

  • 第二章 戦争の放棄

  • 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  • 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

  • 第三章 国民の権利及び義務

  • 第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
  • 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
  • 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
  • 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
  • 第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない。
  • 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
  • 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
  • 第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  • すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
  • 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
  • すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
  • 第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
  • 第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
  • 第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
  • 第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
  • 第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
  • 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
  • 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
  • 第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  • 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
  • 第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
  • 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
  • 第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
  • 第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
  • 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
  • 第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  • 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
  • 第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
  • すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
  • 第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
  • 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
  • 児童は、これを酷使してはならない。
  • 第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
  • 第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
  • 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
  • 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
  • 第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
  • 第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
  • 第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
  • 第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
  • 第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
  • 第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
  • 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
  • 第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
  • 第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
  • 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
  • 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
  • 第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
  • 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
  • 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
  • 第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
  • 第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

  • 第四章 国会

  • 第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
  • 第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
  • 第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
  • 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
  • 第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
  • 第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
  • 第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
  • 第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
  • 第四十八条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
  • 第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
  • 第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
  • 第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
  • 第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを招集する。
  • 第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
  • 第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
  • 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
  • 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
  • 第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
  • 第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
  • 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
  • 第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
  • 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
  • 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
  • 第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
  • 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
  • 第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
  • 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
  • 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
  • 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
  • 第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
  • 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
  • 第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
  • 第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
  • 第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
  • 第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
  • 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

  • 第五章 内閣

  • 第六十五条 行政権は、内閣に属する。
  • 第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
  • 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
  • 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
  • 第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
  • 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
  • 第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
  • 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
  • 第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
  • 第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
  • 第七十一条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
  • 第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
  • 第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
  • 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
  • 二 外交関係を処理すること。
  • 三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  • 四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
  • 五 予算を作成して国会に提出すること。
  • 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  • 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
  • 第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
  • 第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

  • 第六章 司法

  • 第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
  • 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
  • すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
  • 第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
  • 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
  • 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
  • 第七十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
  • 第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
  • 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
  • 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免される。
  • 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
  • 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
  • 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
  • 第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
  • 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
  • 第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
  • 第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
  • 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

  • 第七章 財政

  • 第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
  • 第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
  • 第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
  • 第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
  • 第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
  • すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
  • 第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
  • 第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
  • 第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
  • 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
  • 第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

  • 第八章 地方自治

  • 第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
  • 第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
  • 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
  • 第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
  • 第九十五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

  • 第九章 改正

  • 第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
  • 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

  • 第十章 最高法規

  • 第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
  • 第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  • 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
  • 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

  • 第十一章 補則

  • 第百条 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。
  • この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
  • 第百一条 この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。
  • 第百二条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。
  • 第百三条 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。
  •   昭和二十二年五月三日発行 発行者 憲法普及会

      底本: 「新しい憲法明るい生活」 憲法普及会 編 ・国立国会図書館デジタルコレクション
      

    Last updated : 2025/12/26