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蓬髪垢面
ほうはつこうめん
伸び乱れた頭髪と垢(あか)まみれの顔面。身だしなみがきちんとしていなくて、うすぎたない様子。蓬頭垢面。蓬髪汚面。[精選版 日本国語大辞典]
作家
作品

太宰治

【 春の盗賊 】

いまに私は、諸君と一点うしろ暗いところなく談笑できるほどの男になります。それは、いつわりの無い、白々しく興覚めするほどの、生真面目きまじめなお約束なのであるが、私が、いま、このような乱暴な告白を致したのは、私は、こんな借銭未済の罪こそ犯しているが、いまだかつて、どろぼうは、致したことが無いと言うことを確言したかったからに他ならない。どろぼうは、致したことが無い。ばかばかしく、こだわるようであるが、これにもまた、わけがあるのである。いったいに、私は誤解を受けている。めちゃ苦茶である。さすがに、言うにしのびない、ひどい形容詞を、五つも六つも、もらっている。これは、私が悪いのである。そんなひどい形容詞を、まっさきに案出して、それを私の王冠となして、得々とくとくとしていたのは、誰でもない、私なのである。この私である。芸術の世界では、悪徳者ほど、はばをきかせているものだ、と誰がそんな口碑こうひを教えたものか、たしかにそれを信じていた。高等学校のころには、頬に喧嘩けんかの傷跡があり、蓬髪垢面 ほうはつこうめん、ぼろぼろの洋服を着て、乱酔放吟して大道を濶歩かっぽすれば、その男は英雄であり、the Almighty であり、成功者でさえあった。芸術の世界も、そんなものだと思っていた。お恥かしいことである。

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牧野信一

【 変装綺譚 】

 註――一五〇〇年代の話であるから吾々のヨハン・ゲイテが戯曲ファウストの稿を起す凡そ二百年も前のことである。テレンブルグの医学博士ウヰールが「ファウストとの交遊」なる著に於て次のやうな挿話を伝へてゐる――ファウスト、魔術を乱用したる廉に依りてバーデンブルグの獄屋に投ぜられし時、蓬髪垢面の一教誨師に会ひたり。彼がファウストに述懐する処に依ると、余は剃刀を用ひることが実に不得意で本意なくかかる面貌をしてゐるのだが、御身に何か好き知識はなきか――と。

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野村胡堂

【 新奇談クラブ 第七夜 歓楽の夢魔 】

 法学士水島三吾は、斯うして金看板の物貰いになり下ってしまいました。しかも、それをじ憂いでもする事か、当時は日本一の大英断のように、誇らしい気持にさえなって、偶々たまたま途で腰弁になり済して居る学友などに遇うと、わざとさとれよがしに、その男の前へ、文字通り蓬髪垢面の私の顔を突き出してやったりしたものでした。
 併し、乞食という商売は――私は敢えて商売と申します――決して楽な商売ではありません「右や左の旦那様――」をやるこつもすっかり板に付いてしまって、足へ一斗樽ほどにボロぎれを巻く手際も心得てしまった頃でも、何うかすると貰いが少なくて、夕飯にあり付き損ねたり、暴風雨あらしや吹雪の晩など、橋の下や、堂宮の軒下に、臍まで濡れて、ガタガタ顫え乍ら夜を明かすことも稀ではありませんでした

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林不忘

【 丹下左膳 乾雲坤竜の巻 】

「やッ! 何者ッ!」
 思わず叫んだ栄三郎、飛びのくお艶をうしろに、左腰をひねって流し出した武蔵太郎の柄をタッ! と音してつかんだ。
 すべり開いたはばき元が一、二寸、夜光にえてきらりと眼を射る。
 舟尻ともにすわっている男は山のように動かなかった。
 蓬髪 ほうはつ垢面 こうめん――酒の香がぷんとただよう。
 見たことのある顔……と栄三郎が闇黒をすかす前に、男の笑い声が船をゆすってひびいた。
「はっはっは、またひょんなところで逢ったな」
 言われてみれば、まぎれもない、鈴川源十郎をやりこめて五十両取り返してくれた、あの、名のない男だ。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
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Last updated : 2023/02/23