『近世流行商人狂哥絵図』に見る
「江戸時代の行商人と売り声」
= 曲亭馬琴 =

飴こ買いな飴あめこかいなあめ
近世流行商人狂哥絵図・榛田稲荷代垢離願人
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 ・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)

《近世流行商人狂哥絵図》


あめこかひな飴



あめこかひなよ
あめかひな
いちもんこやにもんこじや
おとりこがねへ
大こんばたけのまん中で
せきたかふてくりよとて
わしよ だまいた
あゝわしよだまいた
サアおかいなさい〳〵
おとりはあめの
御あいきやう
おかひなさい〳〵
 ・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)

《近世流行商人狂哥絵図》


飴こ買いな飴

あめこかいなあめ


飴こ買いなよ
飴買いな
一文子いちもんこや 二文子にもんこじゃ
踊りこがねえ
大根畑の真ん中で
せきだうてくりょとて
わしょ だまいた
ああ わしょ だまいた
さあ お買いなさい
お買いなさい
踊りは飴の
御愛敬ごあいきょう
お買いなさい お買いなさい
  • 「飴こ買いな」「飴こ」とも。
  • 「飴こ買いなよ」と踊りながら飴を売り歩いた商人。安永(1772年 - 1781年)の初め頃から見られたという。
  • 曲亭馬琴が「近世流行商人狂哥絵図」を書く24年程前の、文化8年(1811年)に書いた「燕石雑志えんせきざっし(燕石襍志)」の巻三『四時代謝しじのゆきかい』に次のように見られる。
    『安永のはじめ、あめこかひなと唄いて躍る飴売ありき。これも人のよく知りてわらははともにうたへり』
  • 「一文子や二文子じゃ踊りこがねえ」の件は、「一文や二文の飴を買っても踊らないよ」という意味か。踊りこの「こ」は、飴こと同じように名詞に付いた接尾語か。
  • 石川豊雄という浮世絵師が、明和から安永の頃(1764 - 1781)に描いたとされる「飴賣子供」という団扇絵に次のようにあり、「袋で買えば踊るよ」と言っている。
    『あめこかいなよあめかいな あんめこかわねはおもしくない 二文こや三文こにやおとりはねい ふくろつこをかうならおとりましょ』
  • 「せきだ」は、「雪駄・席駄」のことか。「 雪駄せった 」に同じ。
  • 「だまいた」は、「だました」「 あざむ いた」の意。

  • 《参考  》水野廬朝(猿水洞蘆朝)『盲文画話』に描かれた「あめこかいな」
『あめこかひな飴/飴こ買いな飴』(曲亭馬琴・近世流行商人狂哥絵図)
・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)
あめこかひなよ あめかひな
いちもんこやにもんこじや おとりこがねへ
大こんばたけのまん中で
せきたかふてくりよとて わしよ だまいた
あゝわしよだまいた
サアおかひなさい/\
おとりはあめの 御あいきやう
おかひなさい/\
・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)
飴こ買いなよ 飴買いな
一文子いちもんこや 二文子にもんこじゃ 踊りこがねえ
大根畑の真ん中で
せきだうてくりょとて わしょ だまいた
ああ わしょ だまいた
さあ お買いなさい お買いなさい
踊りは飴の  御愛敬ごあいきょう
お買いなさい お買いなさい

近世流行商人 きんせいりゅうこうあきんど 狂哥絵図 きょうかえず は、曲亭馬琴きょくていばきん (明和4年6月9日(1767年7月4日) - 嘉永元年11月6日(1848年12月1日)/江戸時代後期の読本作者。代表作は『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』)の作品です。天保6年・1835年 に刊行されたもので、江戸時代の行商人の姿と売り声を記しています。

 「二十三番狂歌合」「流行商人絵詞二十三番狂歌合」「近世商人狂歌合」などとも呼ばれます。

 画像は国立国会図書館所蔵によります。このページでは、画像を明るくするために当サイト独自の色彩補正を行っており、国立国会図書館が公開している原画とは色調が若干違います。

《参考》
  • 水野廬朝みずのろちょう(猿水洞蘆朝)『盲文画話ももんがわ』に描かれた「あめこかいな」
  • 水野廬朝(寛延元年〈1748年〉 - 天保7年1月22日〈1836年3月9日〉)

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Last updated : 2022/11/23