『近世流行商人狂哥絵図』に見る
「江戸時代の行商人と売り声」
= 曲亭馬琴 =

枇杷葉湯売りびわようとううり
近世流行商人狂哥絵図・枇杷葉湯賣/枇杷葉湯売り
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 ・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)

《近世流行商人狂哥絵図》


枇杷葉湯賣



本家からす丸
ひばやうとう
第一暑気はらひと
くわくらん
毎年五月せつくより
御ひろう仕ります
煎薬は代物におよばず
たひらいちめんに
おふるまひ申します
半つゝみは廿四文
ひとつゝみは四十八銅
御用ならおもとめなさひ
からす丸
ひばやう湯でござい

これで気がはつきりとなつた
いつふくくんねえかふていこ
かゝあにのませう

さあちやわんをかへします
ありかた〳〵〳〵
 ・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)

《近世流行商人狂哥絵図》


枇杷葉湯売り

びわようとううり


本家ほんけー 烏丸からすまる
枇杷葉湯びわようとう
第一暑気払いとかくらん
毎年五月節句より
御披露つかまつります
煎薬せんやく代物だいもつに及ばず
平ら一面に
お振る舞い申します
半包みは二十四文にじゅうしもん
一包は四十八銅しじゅうはちどう
御用ならお求めなさい
烏丸からすま 枇杷葉湯びわようとうでござい

これで気がはっきりとなった
一服くんねえ うていこ
かかあに飲ましょう

さあ 茶碗を返します
ありがた ありがた
ありがた
『枇杷葉湯賣/枇杷葉湯売り』(曲亭馬琴・近世流行商人狂哥絵図)
・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)
本家 からす丸  ひばやうとう
第一暑気はらひとくわくらん
毎年五月せつくより御ひろう仕ります
煎薬は代物におよばず
たひらいちめんにおふるまひ申します
半つゝみは廿四文 ひとつゝみは四十八銅
御用ならおもとめなさひ
からす丸 ひばやう湯でござい

これで気がはつきりとなつた
いつふくくんねえかふていこ
かゝあにのませう

さあちやわんをかへします
ありかた/\/\
・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)
本家ほんけー 烏丸からすまる 枇杷葉湯びわようとう
第一暑気払いとかくらん
毎年五月節句より御披露つかまつります
煎薬せんやく代物だいもつに及ばず
平ら一面にお振る舞い申します
半包みは二十四文にじゅうしもん 一包は四十八銅しじゅうはちどう
御用ならお求めなさい
烏丸からすま 枇杷葉湯びわようとうでござい

これで気がはっきりとなった
一服くんねえ うていこ
かかあに飲ましょう

さあ 茶碗を返します
ありがた ありがた ありがた

近世流行商人 きんせいりゅうこうあきんど 狂哥絵図 きょうかえず は、曲亭馬琴きょくていばきん (明和4年6月9日(1767年7月4日) - 嘉永元年11月6日(1848年12月1日)/江戸時代後期の読本作者。代表作は『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』)の作品です。天保6年・1835年 に刊行されたもので、江戸時代の行商人の姿と売り声を記しています。

 「二十三番狂歌合」「流行商人絵詞二十三番狂歌合」「近世商人狂歌合」などとも呼ばれます。

 画像は国立国会図書館所蔵によります。このページでは、画像を明るくするために当サイト独自の色彩補正を行っており、国立国会図書館が公開している原画とは色調が若干違います。

《参考》
  • 山東京伝作・北尾重政画による「四時交加(しじのゆきかい)」(寛政10年・1798年版)に描かれた『枇杷葉湯売り』。 *「四時交加」は「四季交加」とも。
  • この「四時交加」は、「近世流行商人狂哥絵図」よりも 35年程前に書かれたもの。
  • 馬喰町三丁目山口屋又三郎の文字が見られる。
《参考》
  • 江戸年中風俗之絵えどねんじゅうふうぞくのえ 』より(国立国会図書館蔵)
  • 橋本養邦はしもとおさくに (?~1847年・ 弘化4年)の作品。
  • 制作年は不明であるが、絵師の橋本養邦の没年が1847年・ 弘化4年とされるため、幕末に近い江戸後期の作品と思われる(1840年・天保11年頃の作と仮定すると )。
《参考》
  • 清水晴風(嘉永四年1851~大正2年1913)の作品『世渡風俗図会よわたりふうぞくずえ』より(国立国会図書館蔵)
  • 烏丸枇杷葉湯賣
    「枇杷葉湯は 毎年夏季になれば 暑氣払ひと称し茶碗壱ぱい 砂糖を入て四文ツゝにて商ふもの也」

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Last updated : 2022/11/23