「近世商賈盡狂歌合」に見る
『江戸時代の行商人と売り声』
= 石塚豊芥子 =

取替平とっかえべえ
近世商賈尽狂歌合・取替平
  • 絵にマウスを乗せると、部分的に拡大して表示されます。
 ・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)

《近世商賈盡狂歌合》


取替平



きせるの潰れでも
釣鐘のこわれでも
鼈甲の折レても
めけつたら もてきナ
とりかへやいにしよ
 ・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)

《近世商賈尽狂歌合》


取替平

とっかえべえ


煙管きせるつぶれでも
釣鐘つりがねこわれでも
鼈甲べっこうの折れでも
めげったら 持ってきな
取替とりかえやいにしょ
  • 「とっかえべえ飴売り」「取替平飴」「とっけえべえ」などとも。
  • 「めげったら」は、つぶれたり壊れたりしたらの意。「めげる」は、こわれる、欠け損じることなどをいう動詞。画像で示した「嬉遊笑覧」でも説明されている。「飴売りをめっけたら(見付けたらの意)」とも掛けるか。
  • 「 とっかえべえ とっかえべえ」と呼び歩きながら、飴と引き替えに鍋・釜・古釘などを集めた。
  • 「喜多村信節・嬉遊笑覧」より「とっかいべい」(国立国会図書館蔵)
    「嬉遊笑覧」
  • 正徳(1711~1716)の頃に、浅草田原町の紀伊国屋善右衛門が郷里の紀州道成寺の鐘を建立するため、古鉄と飴を交換したのが初めという。その後、神田小柳町甚右衛門が古銅と飴を交換することを始め、宝暦九年(1759)頃盛んになったという。
  • この「近世商賈尽狂歌合」より20年程前に書かれた「 嬉遊笑覧きゆうしょうらん 」という書物に「今、江戸に飴と古きせるなどをかえにあるく者あり。とっかえべえと名づく。そのことばに、『めげたらしょ、きせるの古いのととっかえべえにしょ』と呼ぶ」とある。この「めげたらしょ」は、つぶれた煙管を指し、「嬉遊笑覧」では「とっかえべえ」の項目の中で説明をしている。[画像参照]
『取替平』(石塚豊芥子・近世商賈尽狂歌合)
・原文/翻刻(歴史的仮名遣い。*変体仮名は現用に置き換え)
きせるの潰れでも
釣鐘のこわれでも
鼈甲の折レても
めけつたら もてきナ
とりかへやいにしよ
・読み下し(現代仮名遣い・漢字交じり・振り仮名)
煙管きせるつぶれでも
釣鐘つりがねこわれでも
鼈甲べっこうの折れでも
めげったら 持ってきな
取替とりかえやいにしょ

近世商賈尽きんせいあきないづくし狂歌合きょうかあわせは、江戸時代後期の考証家、石塚豊芥子いしづかほうかいしなどによる、嘉永5年(1852年) の作品です。

商人尽し狂歌合」「仕出し商人尽し歌合」などとも呼ばれます。

 この本のタイトルは「商売」(旧字体で「商賣」)ではなく、「商賈(しょうこ)」です。商賈は商人のこと(商売の意味にも使われる)で、この本の別名の「商人尽し狂歌合」「仕出し商人尽し歌合」でも「商人」が使われています。

 画像は国立国会図書館所蔵によります。このページでは、画像を明るくするために当サイト独自の色彩補正を行っており、国立国会図書館が公開している原画とは色調が若干違います。


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Last updated : 2022/11/23