『浮世絵・錦絵』 などを見る「目次」 
  「江戸時代の職業」目次 

職人尽歌合しょくにんづくしうたあわせ』に見る、『中世の職業・職人・商人』
= 江戸時代初期、明暦三年・1657年版より =

 「職人尽歌合しょくにんづくしうたあわせ」(明暦三年・1657年版) 

 職人尽歌合しょくにんづくしうたあわせは、室町時代・戦国時代の公卿、東坊城和長ひがしぼうじょうかずながの書、室町時代中期から戦国時代にかけての大和絵の絵師、土佐光信とさみつのぶの画とされ、この版は江戸時代初期の明暦三年・1657年 とされています。「七十一番職人歌合しちじゅういちばんしょくにんうたあわせ」と呼ばれます。
「職人尽歌合」には、今日からみれば、不適切と受け取られる可能性のある呼称などがみられます。ここでは、歴史上の事実を理解することを趣旨として、そのままの形で掲載します。
 職人名、職業名は出来るだけ現代の漢字で表記するようにし、読み方も歴史的仮名遣いから現代仮名遣いにしました。例えば一番の「ばんざう」は「番匠」と漢字にし、「ばんじょう」と、十三番の「あふぎうり」は「扇売」と漢字にし、「おうぎうり」としました。
 このページでの「職人尽歌合」は、国立国会図書館が所蔵し公開している画像を引用していますが、歌合わせの順番を理解するために、ほとんどの画像で一丁が見開きとなるよう左右のページの入れ替えを行っており原画とは異なる部分があります。また、画像を明るくするために当サイト独自の色彩補正を行っている部分があります。
 このページでの画像は、拡大したり、マウスを乗せて天眼鏡のレンズのように拡大して見ることができます。
 *ここから下の画像は、マウスを乗せると天眼鏡のレンズのように拡大して見ることができます。
一服一銭・煎じ物売
一服一銭いっぷくいっせん「粉葉の御茶、召し候へ」
※路傍で茶を点て、一服を一銭で売る商人。
煎じ物売せんじものうり「おせんじ物おせんじ物」
※茶や薬草を煎じた飲み物を売る商人。
琵琶法師・女盲・瞽女
琵琶法師びわほうし「あまのたくもの夕煙、おのへの鹿の暁のこゑ」
※僧の格好で琵琶の弾奏とともに物語などを語った芸能者。ほとんどが盲目であった。
女盲おんなめくら「宇多天皇に十一代の後胤、伊東が嫡子に河津の三郎とて」
※「瞽女(ごぜ)」とも。鼓、後に三味線を伴奏に唄った盲目の女芸人のこと。
仏師・経師
仏師ぶっし「阿弥陀の像、先蓮華座をつくり候 おりふし法師ばらたがひて、手づから仕候」
経師きょうじ「この巻切り、いかにしたるにか 切り目のそろはぬよ」
蒔絵師・貝磨
蒔絵師まきえし「此御たらひは、沃懸地にせよと仰られ候 手間はよもいらじ」
貝磨かいすり「この太刀の鞘は、莫大の貝が入べき」
※青貝などの貝殻をすって螺鈿細工をする職人。
絵師・冠師
絵師えし「墨絵は筆勢が大事にて候」
冠師かぶりし「別当殿の御拝賀に召さるべき御冠にて候 いそがしや」
※職人の名称が記されていないが、「冠師」が描かれている。
鞠括・沓作
沓作くつつくり「鞠沓は、はたかなるがわろきと」
鞠括まりくくり「難波殿は大がたを御このみある」
立君・辻子君
立君たちぎみ「すは御らんぜよ けしからずや よく見申さむ 清水までいらせ給へ」
※街頭で客を引く娼婦。
辻子君ずしぎみ「や、上臈いらせ給へ ゐ中人にて候 見しりまいらせて候ぞ いらせ給へ」
※夜、辻に立って客を引く娼婦。
銀細工・薄打
銀細工しろかねざいく「南鐐のやうなるかねかな」
薄打はくうち「南鐐にて、打いでわろき」
針磨・念珠挽
針磨はりすり「こばりは針孔が大事に候」
※「針磨」は、縫い針作りの職人。
念珠挽ねんじゅひき「数とりと七へんの玉、むつかしきぞ」
紅粉解・鏡磨
紅粉解べにとき「御べにとかせ給へ 堅べにも候は」
鏡磨かがみとぎ「白みの御鏡は、磨ぎにくゝ侍」
医師・陰陽師
医師くすし「殿下より続命湯、独活散を召され候間、たゞ今あはせ候」
陰陽師おんようじ「われらも今日は、晦日御祓持参候べきにて候」
米売・豆売
米売こめうり「なを米は候 けさの市にはあひ候べく候」
豆売まめうり「われらが豆も、いまだ商ひをそく候ぞ」
いたか・穢多
【いたか】「流灌頂ながさせたまへ 卒塔婆と申すは大日如来の三摩耶形」
穢多えた「この皮は大まいかな」
豆腐売・索麺売
豆腐売とうふうり「豆腐召せ 奈良よりのぼりて候」
索麺売そうめんうり「これは太索麺にしたる」
塩売・麹売
塩売しおうり「きのふの榑売くれうりのあたひまで、けふたまはる人もがな」
麹売こうじうり「上戸たち、御覧じて、よだれ流し給ふな」
玉磨・硯切
玉磨たますり「是はちかごろの玉かな 火をも水をも取りつべし 念珠のつぶにはあたらもの哉」
硯切すずりきり「石王寺は、白身かたくて切りにくき」
※石や瓦から硯を作る職人。
一文字売・灯心売
一文字売ひともじうり
※「一文字」は、女房詞で「ねぎ」のこと。他の写本版の「職人尽歌合」で、「 葱売ひともじうり」とするものも見られる。
灯心売とうじみうり
牙儈・蔵回
牙儈すあい「御ようやさぶらふ」
蔵回くらまわり「御つかひ物御つかひ物」
※質流れ品を売買する商人。
筏師・櫛挽
筏師いかだし「此ほどは水潮よくて、いくらの材木を下しつらむ」
櫛挽くしひき「先こればかり挽きて、のこぎりの目を切らむ」
枕売・畳刺
枕売まくらうり「今一のかたも持て候 ひそかに召し候へ」
畳刺たたみさし「九条殿に何事の御座あるやらむ 帖をおほく刺させらるゝ」
瓦焼・笠縫
瓦焼かわらやき「南禅寺よりいそがれ申候」
笠縫かさぬい「世にかくれなき笠縫よ」
鞘巻切・鞍細工
鞘巻切さやまききり「当時はやらで、得分もなき細工かな」
鞍細工くらざいく「あら、骨おれや」
暮露・通事
暮露ぼろ
通事つうじ
※通訳のこと。通辞。



  「江戸時代の職業」目次

おすすめサイト・関連サイト…

Last updated : 2022/11/23