ものの数え方・助数詞
《 コラム - ちょっと知識 》
種類による船の数え方

船を数える際に使われる助数詞には様々なものがある。
せき
そう
てい
かん
はい
はい
せん
よう
ほん
まい
だい
とこ・しょう
はん・ほ
よく
など、形状、用途などによって多様である。
それぞれどのような船を数える場合に使うのか。ここでは、どのような船にどのような数え方を使うことが多いのかを分類し、種類による船の数え方を見てみる。
ただし、厳密な使い分けが決められている訳ではないので、大まかな分類ということでご覧いただきたい。船の数え方が登場する作品も合わせて見てみることにする。
〈2023年7月23日 改訂〉
〈2023年5月20日 改訂〉
〈2021年8月11日 改訂〉
〈2014年11月3日 改訂〉

《種類による船の数え方》

  • 船の数え方に、種類などによる厳密な区別がある訳ではありません
  • 例えば、「大型船」に分類した『隻』は、小さなボートを数える場合に使われることもあります。また、「中型・小型船」に分類した『艘』が艦船などの大型の船に使われることもあります。
  • 参照 「作品などに見る『船』の数え方」
《ちょっと知識》
養老4年〈720年〉[ ] に成立した『 日本書紀にほんしょき 』に、「船」の数え方として「隻」「艘」が見られる。では、これらは何と読まれていたのか。
『日本書紀』には読み方は記されていないが、鎌倉時代末期に表されたとされる日本書紀の注釈書『 釈日本紀しゃくにほんぎ 』では振り仮名が振られている部分がある。
それによれば、船の数え方に使われている「隻」「艘」には、「フネ」または「フナ」との振り仮名が振られ、「セキ」「ソウ」とする表記は見られない[国書データベース『釈日本紀』の358コマから383コマにかけての4箇所程 ]。なお、「隻」の字については「フサ」と振り仮名が振られている箇所があるが、これが「フナ」の間違いなのか、「フサ」とする数え方があったのかどうかは調査中。(日本書紀での隻と艘の使い分けについては、その形状や用途などによるものなのかは調査中)
数え方 船の種類
隻(せき)
大型船で
 タンカー、大型汽船、貨物船、艦船など。
  • 「隻」は、現代では主に大型船で使われることが多いが、古くから船全般に使われていたことが文献から分かる。また、現代でも船全般に使われる。
  • 日本書紀(養老4年〈720年〉[] 成立)に見られる「隻」。[詳細下記  ]
  • 「仍賜以良馬七十匹・船一十隻」「仍賜良馬二匹・同船二隻」「卽令遣助軍數一千・馬一百匹・船卌隻」「以舟二百隻載石上山石順流控引」「卽以船一隻與五色綵帛」「賜新羅王輸御調船一隻」「總合二千人乘船卌七隻」「船一隻賜新羅客」
  • 平安時代の延長5年〈927年〉[] に完成した法令集『 延喜式えんぎしき 卷第廿八 兵部省 隼人司』に、「船」の単位として「 せき 」が見られる。これは、都からの伝令のために道筋に置かれた『駅』に配備したものを記した中に見られるもので、 出羽国 でわのくに に船が配備されている。
  • 出羽國
    驛馬 最上。十五疋。村山。野後。各十疋。避翼。十二疋。佐藝。四疋。船十隻。遊佐。十疋。蚶方。由理。各十二疋。白谷。七疋。飽海。秋田。各十疋。
    傳馬 最上。五疋。野後。三疋。船五隻。由理。六疋。避翼。一疋。船六隻。白谷。三疋。船五隻。
    『延喜式(えんぎしき)』に見られる「船」の単位の「十隻」「五隻」など
    『延喜式』に見られる「船」の単位の『隻』
    [国立国会図書館蔵・国史大系 第13巻より]
  • 明治38年〈1905年〉に発表された夏目漱石の「倫敦塔ロンドンとう」では、 『帆懸舟ほかけぶねが一せき塔の下を行く』と見られる。
艘(そう)
中型・小型船で
 はしけ、帆掛け舟、和船、ボートなど。
  • 「義経の八艘飛び」などの言葉に見られる。
  • 日本書紀(養老4年〈720年〉[]成立)に見られる「艘」。[詳細下記  ]
  • 「載于八十艘船、令從官軍」「貢上調船八十艘」「船卅二艘及鼓吹旗幟皆具整飾」「以飾船卅艘迎客」
  • 応保年間(1161年-1162年)から、寿永年間(1182年-1183年)までの20年余りの源氏、平家の盛衰興亡を描いた「源平盛衰記(げんぺいせいすいき/げんぺいじょうすいき) 」には、船に関する記述が多数出てくるが、「隻」は全く見られず、「艘」が47箇所、「葉」が3箇所となっている。
  • 「平家は三百余艘の兵船を調て、屋島の磯に漕出たり。源氏は備中国水島が途に陣を取て、千余艘の兵船を構たり。源平互に海を隔て支たり。」
  • 「左は湖水、波浄くして一葉の船を浮べ、右は長山遥に連りて影緑の色を含めり。」
  • 江戸時代に書かれた数学書『塵劫記じんこうき』(寛永4年・1627年)に、「舟」の単位として「そう」が見られる。
    『塵劫記(じんこうき)』に見られる「舟・一艘」
    『塵劫記』に見られる「舟・一艘」
    [国立国会図書館蔵]
  • 『和漢音釈書言字考節用集(元禄11年・1698年)』には、『「そう」は、船の総名(総称)で、今は船の数として使われる』との意の表現が見られる。
  • また、『大字典(大正6年・1917年) 編纂:上田萬年 他』にも、「 そう」は『舟の総名。船舶の数』との説明が見られる。
  • 明治44年(1911年)に編纂された『国漢新辞典』には『船・一艘、一隻』と見られる。
  • 『塵劫記(じんこうき)』に見られる「舟・一艘」
    『国漢新辞典』に見られる「船・一艘、一隻」
    [国立国会図書館蔵]
  • 明治38年〈1905年〉に発表された夏目漱石の「倫敦塔ロンドンとう」では、 『伝馬てんまの大きいのが二そうのぼって来る』と見られる。
艇(てい)
小型船で
 競漕用ボート、ヨット、潜水艇、艦艇など。
  • 『艇』について『大字典(大正6年・1917年) 編纂:上田萬年 他』では、『小さく狭長なる船』との表現が見られ、『艇隊』の説明では『こぶねの一隊』としている。
艦(かん)
艦船で
 軍艦、駆逐艦、航空母艦、護衛艦、巡洋艦など、「艦」が付く船で「一艦」「二艦」などと数えることがある。
  • 「艦」は、「いくさぶね(軍船)」の意味がある。
  • 「艦」について『大字典(大正6年・1917年) 編纂:上田萬年 他』では、『古昔、板を四方に施して矢石を禦ぎ、船内上下にゆかを重ねて恰も牢檻の如くに構えし戦艦』との表現が見られる。なお、同字典の「艦隊」の説明で、『軍艦二艘以上を以て編制せるもの』と軍艦の数え方に『艘』を使用している。
杯・盃(はい)
主に、
特殊な船で
 かつお船などの漁に出る船でよく使われるほか、伝馬船、競技用ヨット、タンカー、艦艇などでも使われ、またその他の船でも使われることがある。
 ただし、「杯・盃」はあまり一般的な数え方ではなく、いわゆる「業界用語」的な色合いを持つ数え方とも言える。
 ページ内で引用した文献では、明治時代生まれの作家の作品に「杯」が見られる。
  • 「船」は、木材や鋼などで中を空洞に造ることから、内部を空洞にした箱形の容器も「船」と呼ぶことがある。

    《船が容器の意味として使われる例》
     古事記 上(712年・和銅5年)[]
    「毎其佐受岐置酒船而 毎船盛其八鹽折酒而待」
    「其の佐受岐毎に酒船さかふねを置きて、船毎に其の八塩折やしおおりの酒をれて待ちよ」
  • このように、「船」には、水・湯・酒などの液体を入れる容器としての意味もあるため、容器を満たした数え方の「杯」が「船」でも使われたのではないかとも考えられるれる。「杯」は「さかずき」であるため、異体字の「盃」も使われる。
《参考》
 江戸時代に、黒船が渡来した際に詠まれたとされる落書らくしょ ・狂歌に「杯」という言葉が見られる。黒船は、嘉永6年・1853年に日本に来航したアメリカのペリー艦隊の艦船。
「肥後中村恕斎日録」より

 嘉永六葵丑年 七月十六日

    蒸気船 長サ三十八間と相見申候
船ノトモニ御座候 大筒 凡二十貫目之玉目ニ被存候、白キ角ナモノ御座候ハ 紙ヲ張付を出し有之 何レ大筒ト相見申候

    蒸気船之図

 右田上素左衛門浦賀へ差出候ニ付見受け候儘写し遣し候也、

江戸落書之風説左之通
 日本を茶ニして来たかしょうきセん
   たった四杯て夜もねられぬ
細川の水に合たかしょうきセん
  四杯くらいハたった一トのミ
御老中阿部様之評なるべし
 安倍川も評判ほどニあじかない
  しょうきせんニはおとるお茶菓子
 具足屋か唐人様とそっという
 毛唐人猿ハー太閤様かー地獄て笑ふとる
 御手伝やまって見れば宝ふね
 牛込之隠居ハにっと舌を出し
「江戸時代落書類聚らくしょるいじゅう」矢嶋松軒編(1915年・大正4年)より
○米艦渡来 嘉永六年癸丑六月三日米国軍監四艘浦賀湾に入る

落首
「泰平のねむりをさますじょうきせんたつた四はいでよるも寝られず」(原文は変体仮名で書かれている)

「泰平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)たった四杯で夜も寝られず」 (漢字交じりで)

 たいへいの ねむりをさます じょうきせん
 たったしはいで よるもねられず
  • 「上喜撰」はお茶の銘柄で、「蒸気船」に掛けている。「四杯」は、お茶の四杯と艦船の四隻を掛けている。「江戸時代落書類聚」の原文では、「じょうきせん」の平仮名の左右に「蒸気船」と「上喜撰」の文字を配している。
  • 高級なお茶は、たった四杯飲んだだけで夜眠れなくなると詠いながら、たった四杯の艦船で世の中が騒がしく、夜も眠れないと時勢を揶揄している。
  • 「江戸時代落書類聚」は、矢嶋松軒が江戸時代の落首・落書きを蒐集し体系的にまとめた文献で、「国立国会図書館デジタル化資料」で読むことができる。 「米艦渡来」の項目は第23巻の22コマ目にあり、「泰平のねむりを…」は24コマ目にある。「泰平のねむりを…」の他にも多数の関連する落首が収録されている。
《参考》
 1965年(昭和40年)に公開された映画、「太平洋奇跡の作戦 キスカ」の中で、駆逐艦を数える言葉として「ハイ」という表現が見られる。
  • 大村少将(三船敏郎)「艦長がまだ足らんようだな」
  • 玉井中佐 (稲葉義男) 「いえ、全員揃っております」
  • 大村少将 「いや、船だよ。駆逐艦がもう五ハイは欲しい」
  • 川島中将(山村聰) 「そりゃ無理だ。連合艦隊の手持ちの駆逐艦はあと四十隻も残ってないだろう」

  • 玉井中佐 (稲葉義男) 「来ました。増援の駆逐艦です」
  • 大村少将(三船敏郎) 「たったの3バイか…」
  • 玉井中佐 「いいえ、もう一隻」
  • 大村少将 「ほう、4ハイか」
  • 玉井中佐 「あっ、もう一パイ」
  • 大村少将 「ウン?」「うん、確かに…」
  • 玉井中佐 「あ、また。6パイです」

  • ・『太平洋奇跡の作戦 キスカ』
  • ・1965年 東宝株式会社
  • ・脚本:須崎勝弥
  • ・原作:千早正隆「太平洋海戦最大の奇跡」
  • ・監督:丸山誠治
  • 台詞の表記は、DVD版の日本語字幕より引用。
船(せん)
  • 数える船の名前が分かっている場合や、船の名前が重要である場合などに使われる。
    《例》「○○丸、○○丸、○○丸の3船が…」
  • 大きさや用途などにかかわらず、複数の船を表現する際に使われる。
    《例》〈海上交通のルール〉「2船が互いに進路を横切るように行き会った場合、相手を自分の右側に見る船の方が避けなければならない」
  • 出航する順番などで。
    【参考】坂口安吾 「明治開化 安吾捕物 その八 時計館の秘密」: 儲けた金で第二船第三船第四船と矢つぎ早に差し向けたのがことごとく大当り。
葉(よう)
小舟で
 文学作品などでの雅語的表現として使われ、主に「舟」という字との組み合わせでで登場することが多い。
 水面に浮かぶ木の葉に喩えた表現。
片(へん)
小舟で
 丸木舟など、極めて小さい船で。
葦(い)
小舟で
 一葦は、「現今万宝新書(明治20年〈1887年〉)」に見られる。一枚の あしの葉にたとえて、一艘の小舟。
掉(とう・ちょう)
小舟で
 一掉は、「現今万宝新書(明治20年〈1887年〉)」に見られる。掉は、ふる・ふるう・ただすなどの意味を持つが、棹(とう)と通じ、さお・さおさすとの意味をも持つとされることから、棹で操る小舟の数え方に使われるものと思われる。
本(ほん)
丸木船で
 丸太をくりぬいて作るので「本」で数えられことがある。
枚(まい)
台(だい)
床(とこ・しょう)
房(ふさ)
いかだ
 平たい板の状態なので「枚」や「台」「床(とこ・しょう)」などが使われる。また、板を何枚もまとめた状態から「房」でも数えられる。
帆(はん・ほ)
帆掛け船で
 帆を張った状態を表して。
翼(よく)
古代中国戦艦で
 漢詩に「千翼汎飛浮/千翼せんよく うかびて飛浮ひふ す(千にのぼる多くの船が浮かび進んでいる)」(530年頃)などと見られる。古代中国の軍艦に、三翼と呼ばれた大翼・中翼・小翼などの種類があった。
中国明代兵船で
 「枝」は、中国明代の兵書『武備志』(1621年成立)に「兵船」の数え方として見られる。兵士を運ぶことだけを目的とした簡易な細長い形をしていたからとも考えられるが、形状、由来など未詳。同書による戦船・哨船などの数え方は、一箇所のみ䑸が使われているが、他は全て隻である。
  • 2010年6月に起きた、浜名湖でのカッターボート(手こぎボート)での事故では、「艘」「艇」という表現が新聞・テレビで見られた。
  • 2011年1月に起きた、島根・鳥取での大雪による400近い小型漁船の転覆沈没事故では、各新聞・通信社・テレビ局とも「隻」を使用していた。インタビューに答えた漁師は「艘」と言っていた。
  • 2012年3月10日に琵琶湖で行われた「びわ湖開き」のニュースでの、観光船などが湖上をパレードしたくだりで、朝日、毎日、読売の各新聞は「隻」を使い、共同通信社は「40艇がパレード」と自社サイトに掲載した。

  • 共同通信社 記者ハンドブック 第12版」には、 「船舶は隻・艇で数える」という表現が見られます。
  • NHKことばのハンドブック第2版」によれば、貨物・石油タンカー・潜水艦などの大型は「隻」、はしけ・ボートなど小型のものは「艘」、ヨットは「艇」を使うとされ、その他の新聞社などの用語集では「船舶は隻、但し小型のものでは艘で数える場合もある」というような表現が見られます。

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Last updated : 2024/06/28